完全失業率2.6%改善の裏で失業者は7か月増加──賃上げ局面に動く日本の雇用市場

2026年2月の完全失業率は2.6%で、前月の2.7%から0.1ポイント改善した。7か月ぶりの改善 という見出しは明るく見える。しかし同じ統計の中には、別の表情もある。完全失業者の数は180万人で、前年同月比15万人増。7か月連続で増えている。

失業率は改善したのに、失業者は増えている。この一見矛盾した構図こそが、今の日本の雇用市場の実態を映している。

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完全失業率は何を測っているのか

まず指標の意味を押さえておく。完全失業率とは、仕事を持たず、就職を希望し、求職活動をしている人が労働力人口全体に占める割合だ。日本では長らく2%台前半から半ばで推移しており、国際的に見てもかなり低い水準にある。

重要なのは、就業者数と失業者数は同時に増えることがあるという点だ。転職や再就職を目指して労働市場に参加する人が増えると、仕事に就いている人も、まだ就いていない人も両方増える。失業率はあくまで比率なので、就業者の増え方が大きければ、失業者が増えても率は下がる。

今回の数字がまさにそれに当たる。就業者数は6779万人で前年同月比11万人増、正規の職員・従業員は3674万人で同30万人増だった。一方、完全失業者は前年比で15万人増えた。

賃上げ局面は労働移動を強めやすい

総務省は今回の改善について、給与など、よりよい条件を求めていったん仕事をやめた人が、新たな仕事に就いたことなどが要因 と説明している。

ここに、現在の雇用市場の鍵がある。2024年から2025年にかけて、日本では春闘を中心とした賃上げが続いた。賃上げが一部の企業や業種に先行した結果、より良い条件を求めて職場を移る動きが強まりやすい局面に入っていたとみることができる。

いったん退職して求職活動を行う人、つまり転職途中の失業者が増えるのは、そうした局面では自然な動きでもある。今回の数字も、賃上げ局面と労働移動活発化が同時に進んでいる状態と整合的だ。

もちろん、転職希望者が全員スムーズに次の仕事に就けているわけではない。現時点では景気悪化そのもののシグナルとまでは言いにくいが、雇用のミスマッチが広がっている可能性は残る。

求人側の熱気はまだあるが、ピーク時ほどではない

雇用市場のもう一つの視点が、企業側の採用意欲だ。

厚生労働省が公表する有効求人倍率は、ハローワークに登録された求人数を求職者数で割った指標で、1倍を超えると求職者1人に対して1件以上の求人がある状態を示す。足元で確認できる最新の参考値では1.19倍と、1倍をしっかり上回る水準を維持している。

ただし、コロナ後に人手不足が強く意識された局面と比べると、有効求人倍率は低下傾向にある。人手が足りない状態は続いているが、その切迫感はやや和らいできたと読める。

つまり今の日本の雇用市場は、弱くはないが、強すぎてもいない。失業率2.6%はなお低いが、転職の活発化と求人倍率の緩やかな低下は、単純な 人手不足一色 とは違う局面に入りつつあることを示している。

正規雇用30万人増の意味

今回の統計で見落としたくないのが、正規の職員・従業員が前年同月比30万人増えた点だ。

非正規雇用の増減に目が向きやすいが、正規雇用の増加は、企業が長期雇用を前提とした採用を続けていることを示す。人手不足業種では、処遇改善と引き換えに非正規から正規への転換を進める動きもあり、それが数字に表れている可能性がある。

産業別では、卸売・小売業が前年比30万人増、運輸・郵便業が24万人増と目立った。物流需要の底堅さや流通業での採用継続が背景にある可能性が高い。

雇用統計が示す日本経済の体温

失業率2.6%という数字は、日本の雇用が急速に悪化していないことを示している。日銀が2025年以降に進めてきた利上げ局面でも、雇用が大きく崩れていないことは、賃上げ持続の土台として機能してきた。

一方で、失業者が7か月連続で増えているという事実は、転職や労働移動が加速している局面でもあることを示す。同じ職場に長く留まるモデルから、より良い条件を求めて移る動きが強まる。そうした傾向が、数字の上でもにじみ始めている。

物価上昇が続く中で、賃上げが家計を守る力になるかどうかは、こうした雇用市場の動きと切り離せない。転職を通じて賃金を引き上げる動きが広がれば、消費の底堅さにもつながる。逆に、転職途中の失業者が増えたまま再就職が進まなければ、家計への圧力は強まる。

今の雇用改善を安心材料と読むか、転換期の揺れと読むかは、今後数か月で完全失業者数の増勢が続くか、正規雇用増が続くか、有効求人倍率がさらに下がるかにかかっている。

(本稿は各種公開情報をもとに作成しました。一部数値は記事掲載時点の情報です)

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この記事を書いた人

CFP®/1級ファイナンシャルプランニング技能士
公益社団法人 日本証券アナリスト協会認定
・プライマリー・プライベートバンカー
・資産形成コンサルタント
一般社団法人金融財政事情研究会認定
・NISA取引アドバイザー

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