2月の街角景気、4か月ぶり改善——「旅行・外食は強いが、日常消費は節約」という二極化

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「街角景気」が4か月ぶりに改善

内閣府が発表した2月の景気ウォッチャー調査では、景気の現状を示す指数(DI)が48.9となり、前月の1月から1.3ポイント上昇して、4か月ぶりの改善となった。内閣府は景気の基調判断を「持ち直している」で据え置いた。

ただし、数字が改善したとはいえ、DI は依然として50を下回っている点に注意が必要だ。この調査では50が「景気が横ばい」の目安となっており、今回の48.9は「改善に向かいつつあるが、楽観一色とは言えない」水準だ。


「景気ウォッチャー調査」とは何か

まず、この調査について説明しておこう。景気ウォッチャー調査は、内閣府が毎月、地域の景気動向を把握しやすい業種で働く人たち——小売店、飲食店、ホテル、タクシー、製造業、職業紹介機関など——約2000人を対象に実施するアンケートだ。「3か月前と比べて景気はどう変わりましたか?」という問いへの回答を指数化したもので、現場で実際に消費者や企業と接している人たちのリアルな感覚が反映される。

「街角景気」とも呼ばれるのは、まさにそのためだ。お客さんの入り具合、財布のひもの締まり具合、受注の増減——そうした身近な肌感覚が数字になる。


改善を引っ張ったのは「体験型消費」

今回、DI の改善を主導したのは、旅行・外食・宿泊といったサービス消費だ。業種別に見ると、サービス関連が前月比+3.0ポイント、飲食関連が+2.9ポイントと、比較的大きく改善した。

実際の声も届いている。東海地方のホテルからは「日中関係の影響で中国からの旅行者は減っているが、国内やほかの国からの旅行者が増えており、減少分を補えている」という報告があった。インバウンド(訪日外国人旅行客)の国籍構成は変わりつつあるものの、全体の需要は底堅い。

北陸地方のレストランからは「1月の大雪の反動もあって来客数が多く、2月後半の連休は大型連休並みの集客となった」という声も。天候悪化が続いた後の反動増が、サービス消費の数字を押し上げた面もある。

こうした「旅行・外食」の堅調さは、他の統計とも整合的だ。民間調査である2月の日本サービス業PMI(S&P Global調べ)は53.8となり、50超を11か月連続で維持。2024年5月以来の高水準でもあり、「サービス業全体が底堅い」という見立てはデータ面でも裏付けられている。


一方で、「日常消費」には節約の波

しかし、今回の調査は明るい話だけではない。小売関連の改善は+0.6ポイントにとどまり、サービスや飲食との差は鮮明だ。

南関東地方のコンビニエンスストアからは、こんな声が寄せられた。「来店者数の減少が顕著になっている。物価高の影響で、今まで気軽にコンビニで購入していたものをドラッグストアなどで購入する客が増えている」。

これは、消費者が「全部を我慢する」のではなく、使うところと削るところを選んでいることを示している。日常的な少額支出では価格に敏感になっている一方で、こうした消費の「選別」が、業種間の格差として現れている。


物価の上昇が消費を二方向に押す

この構造の背景には、物価上昇が続いていることがある。ロイターの報道によると、日本のサービス価格は前年同月比2.6%上昇したと伝えられている。賃上げや人手不足を背景に、人件費やコストの上昇がサービス価格全般の押し上げ要因になっている可能性がある

つまり、旅行や外食にお金を使おうとしても、その費用自体が以前より高くなっている。それでも消費者が体験型消費を選ぶのは、「特別な時間にはお金をかける」という意識が働いているからかもしれない。一方で、ドラッグストアへの流出が示すように、日常的な支出では価格に対してシビアな眼が向けられている。


全体像:「崩れてはいない、でも全面的に強くはない」

他の指標と合わせて見ると、足元の日本経済は次のように整理できる。

  • サービス業を中心に、一定の持ち直しが続いている
  • 製造業でも一部に底堅さを示す指標がみられる
  • ただし、小売や日常消費では節約志向が強まっており、景気の「裾野」まで力強さが広がっているとは言いにくい

内閣府が「持ち直している」という表現を変えなかったのは、強くも弱くもないというこの現状を反映したものだ。「回復」というより「底打ちから緩やかな改善」という表現が実態に近い可能性がある。


読み解くべき本当のポイント

今回の調査で最も注目すべきは、数字の改善よりも消費の中身が二極化しているという構造だ。

旅行・外食にはお金が動く。しかし、コンビニやスーパーでのちょっとした買い物では節約が進む。これは、物価高が長引く中で家計が賢く「選別消費」をしていることを意味する。

景気が持ち直していても、家計が全面的に楽になっているわけではない。今後は賃上げの広がりが、こうした選別消費を和らげるかどうかが焦点になる。


(本稿は各種公開情報をもとに作成しました。一部数値は記事掲載時点の情報です)

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この記事を書いた人

CFP®/1級ファイナンシャルプランニング技能士
公益社団法人 日本証券アナリスト協会認定
・プライマリー・プライベートバンカー
・資産形成コンサルタント
一般社団法人金融財政事情研究会認定
・NISA取引アドバイザー

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