豪・消費者物価指数(Consumer Price Index:CPI)は、オーストラリア国内の物価動向を示す主要な経済指標であり、一般消費者が購入する財・サービスの価格の平均的な変動を測定するものである。特に2022年以降、新たに導入された「月次CPI」は、四半期ベースでは把握しにくかったインフレの動きをよりタイムリーに捉えるための指標として注目を集めている。
この月次CPIは、オーストラリア統計局(Australian Bureau of Statistics, ABS)が公表しており、従来の四半期CPIと同様に生鮮食品、燃料、住宅コストなど、日常生活に密着した品目を含んでいる。
指標の意義と使われる場面 #
インフレ率の変化は、中央銀行であるオーストラリア準備銀行(RBA)の金融政策に直接影響を与えるため、CPIは政策金利の判断材料として最も重要な統計のひとつとされている。月次CPIは速報性に優れており、政策決定者や市場関係者にとって、インフレトレンドの兆候をいち早く察知する手段となる。
特にインフレ率が目標レンジ(通常2〜3%)を超えて上昇すれば、RBAによる利上げ観測が強まり、豪ドルや債券市場に即座に影響を及ぼすこともある。
四半期CPIとの違い #
オーストラリアでは、長年にわたって四半期ごとのCPIがインフレ指標の中心だったが、これは頻度が低く、市場の即応性を損ねるという課題があった。そこで導入されたのが月次CPIであり、対象品目や地域にやや制限があるものの、概ね四半期CPIと同様の傾向を持ちつつ、情報の「鮮度」が高い点が特徴である。
ただし、月次CPIは一部品目が隔月収集のため、データのばらつきや季節調整の影響が出やすく、四半期版に比べてブレが生じることもある。そのため、あくまで「補完的な指標」として位置づけられている。
読み解き方と留意点 #
月次CPIを見る際は、前年同月比(前年比)での伸び率が重視される。また、変動の大きい食品・エネルギーを除いた「トリム平均」や「加重中央値」といったコア指標も参考にされ、基調的なインフレの見極めに使われる。
ただし、単月の数値に過度に反応するのではなく、3か月移動平均や基調的トレンドと照らし合わせながら総合的に判断することが望ましい。特に為替市場では、予想と実績のギャップが豪ドルの急変動につながることもあるため、市場の織り込みとの比較が不可欠である。