アメリカ・PMI(Purchasing Managers’ Index、購買担当者景気指数・速報値)は、製造業やサービス業に従事する企業の購買担当者に対するアンケートをもとに算出される景況感の指標です。特に速報値(Flash PMI)は、米国経済の当月の動向をいち早く知ることができる先行的な統計として、金融市場や政策当局から高い注目を集めています。
この指標は、S&Pグローバル(旧IHSマークイット)が毎月中旬に発表しており、主に製造業PMI、サービス業PMI、そして両者を合わせた総合PMIの3つが公表されます。それぞれ、新規受注、生産、雇用、在庫、納期などの項目について「改善」「横ばい」「悪化」といった回答を数値化し、全体を0〜100のスコアで表現します。一般的に50を上回れば拡大、下回れば縮小を意味します。
アメリカでは、製造業がGDPの約10%強を占める一方、サービス業は7割以上を占める構造であるため、サービス業PMIの重要性も非常に高くなっています。とくに総合PMIは、国内経済の「体温計」として、FRB(連邦準備制度理事会)や市場参加者にとって意思決定の材料になります。
速報値は通常、月の第3週に発表され、月末に確報値が出されます。速報値は主要企業を対象とした早期回答に基づくため、確報値との差が生じることもありますが、それでも発表直後には為替、株式、金利市場が即座に反応するほどの影響力を持ちます。
また、物価動向を問う項目も含まれているため、インフレ圧力の兆候をつかむ手がかりとしても有効です。たとえば「仕入価格の上昇」や「納期の遅延」などが目立てば、供給制約やコスト高を背景としたインフレリスクが意識され、FRBの金融政策見通しにも影響を及ぼします。
このように、アメリカ・PMI速報値は、景気の転換点をいち早く察知するための実務的なツールであり、GDPや雇用統計などの「遅行データ」に先立つタイミングで発表される点において、市場と政策の両面から欠かせない経済指標と位置づけられています。