ユーロ圏・製造業PMI(Purchasing Managers’ Index、購買担当者景気指数)は、ユーロ圏に属する各国の製造業の景況感を月次で測定する経済指標であり、特に速報値(Flash PMI)はその中でも速報性が高く、金融市場に強い影響を与える先行指標として注目されています。英S&Pグローバル(旧IHSマークイット)が調査・公表しています。
この指標は、製造業の購買担当者へのアンケート結果に基づいて構成されており、「新規受注」「生産」「雇用」「納期」「在庫」といった項目に対する評価を集約して指数化します。50を景気の分岐点とし、50を上回れば拡大、下回れば縮小を意味します。製造業の活動水準が高まっていれば景気の改善、低迷していれば停滞や後退の兆候として市場に受け止められます。
ユーロ圏PMIの速報値は、通常その月の第3週に発表され、同月末に確報値が公表されます。速報値はドイツやフランスなど主要国のデータを基に推計されるため、やや暫定的ではあるものの、市場にとっては最初に手にする当月のユーロ圏経済状況を示すデータとなり、政策当局や投資家の意思決定に大きな影響を与えます。
ユーロ圏の製造業はドイツを筆頭に外需依存度が高く、グローバル経済の影響を受けやすいため、PMIの変動は国際的な需給環境の変化を反映することもしばしばあります。また、インフレの兆候や供給制約の存在も、納期やコストに関する項目から間接的に読み取ることができます。
欧州中央銀行(ECB)も、成長と物価の先行き判断の一環としてPMIを重視しており、利上げ・利下げを検討する局面では、CPIや失業率と並んで注目される指標のひとつです。
このように、ユーロ・製造業PMI(速報値)は、わずか数週間先の景気動向を素早く把握できる「経済の初動レポート」として、欧州のマクロ環境を読むうえで不可欠な指標となっています。