英国・消費者物価指数(Consumer Prices Index:CPI)は、イギリスにおける物価変動、すなわちインフレの動きを測る主要な経済指標の一つです。英国家統計局(ONS:Office for National Statistics)が毎月発表しており、一般家庭が購入する財やサービスの価格変動を定点的に追跡することで、生活コストの上昇率を数値化しています。
この指数は、食品や衣料品、交通費、エネルギー、家賃など、多様な消費項目を対象としており、消費者の支出パターンをもとに加重平均が計算されます。前年同月比の変化率が最も注目されており、例えば「CPIが6.7%上昇」といった表現は、1年前に比べて生活コストが6.7%増加したことを意味します。
イングランド銀行(BOE:Bank of England)は、物価安定のために「CPI年率2%」をインフレ目標と定めており、この指標の動向は金融政策の判断材料として極めて重要です。インフレ率が目標を上回れば、金利引き上げの圧力が高まり、逆に下回る場合には緩和的な政策が選択される可能性が出てきます。
また、CPIの補完指標として「CPIH(CPI including owner occupiers’ housing costs)」も公表されており、これは自宅保有者の居住コストも加味したより実態に近いインフレ指標として注目されています。さらに、旧来の「小売物価指数(RPI)」も一部で利用されているものの、現在ではCPIのほうが政策上・統計上の主軸となっています。
英国のCPIは国際比較が可能な基準に則って設計されており、ユーロ圏のHICP(調和消費者物価指数)と類似の性格を持ちます。したがって、英国経済のインフレ動向を他国と比較する際にも活用しやすく、ポンド相場や英債利回り、株価指数などの動向にも強く影響を与える指標です。
このように、英国・消費者物価指数(CPI)は、生活者の実感に近い物価の変化を捉えると同時に、金融政策・為替市場・社会保障制度など幅広い領域に影響を及ぼす、基幹的な経済指標として位置づけられています。