オーストラリアの中銀政策金利は、オーストラリア準備銀行(RBA:Reserve Bank of Australia)が設定する短期金利の誘導目標であり、「キャッシュレート(Cash Rate)」と呼ばれます。このキャッシュレートは、オーストラリア経済全体の資金調達コストを決定づける中核的な指標で、インフレ抑制と景気安定の両立を目指す金融政策の中心に位置しています。
キャッシュレートは、民間金融機関同士が翌日物資金を貸し借りする際の金利を調整することで、広範な金利体系に影響を与えます。具体的には、住宅ローン金利、企業の借入金利、そしてオーストラリア・ドルの為替レートにまで波及効果が及びます。RBAはこの金利を通じて、消費活動や投資、輸出入の動きをコントロールし、物価安定や雇用最大化を図ります。
政策金利の変更は、毎月第1火曜日に開催されるRBA理事会で決定され、その内容は即日発表されます。市場参加者にとっては、金利の「引き上げ」「据え置き」「引き下げ」が景気の方向性を示すシグナルとなり、為替市場や株式市場に即座に影響を与えます。
インフレ率がRBAの目標(通常は2〜3%)を大きく超えるときは利上げが、逆に景気後退や失業率の上昇が懸念される場合には利下げが選択されることが一般的です。近年では、世界的な金融緩和やインフレ再燃など、外部環境の変化に応じてRBAのスタンスにも変化が見られています。
RBAの政策金利は、アメリカのFF金利や日本の政策金利と並び、世界の金融政策動向を比較するうえでも欠かせない存在です。オーストラリアは資源輸出国であり、中国やアジア市場との経済的な結びつきが強いため、RBAの動向はグローバルな市場にとっても注目度が高いと言えるでしょう。
キャッシュレートは単なる金利水準ではなく、金融当局の経済見通しと政策判断が凝縮された「政策の温度計」として、投資家・企業・家計の意思決定に大きく影響を与える存在です。