アメリカ・鉱工業生産指数(Industrial Production Index)は、米国の鉱業・製造業・公共事業といった生産活動の動向を示す経済指標です。連邦準備制度理事会(FRB)が毎月中旬に発表しており、米国内の実体経済の「モノの生産力」を把握するうえで基礎的な役割を果たしています。
この指数は、製造業(自動車や機械、IT関連など)の比重が最も大きく、次いで鉱業(石油・天然ガスなど)、そして電力・ガスといった公共事業の順に構成されています。特に製造業の動向は、米国経済全体の循環と密接に関係しており、企業の設備投資や消費者需要の先行指標として注目されます。
鉱工業生産指数の値は、基準年(現在は2017年)を100として設定されており、その変化率(前月比や前年比)によって経済の拡大・減速が判断されます。通常、前月比で0.3%程度の増加が「堅調」とされ、マイナスが続けば景気の減速感が意識されることになります。
この指標の特徴として、GDP統計よりも早く発表される点と、生産そのものに着目している点が挙げられます。サービス業が経済の大半を占める現代においても、製造業の停滞は雇用や輸出入、企業収益に波及するため、鉱工業生産は依然として重要な判断材料となっています。
関連指標としては、ISM製造業景況指数(Purchasing Managers’ Index)や、耐久財受注、設備稼働率(Capacity Utilization)などがあります。特に設備稼働率は鉱工業生産と同時に公表され、生産能力に対する実稼働の割合を示すため、企業の余力やインフレ圧力の兆候を読み取る手がかりになります。
米国市場では、鉱工業生産が予想を上回れば金利上昇観測につながり、ドル高要因と受け止められることがあります。逆に、低調な結果は景気減速懸念から株価に下押し圧力をかける場面もあります。こうした市場とのつながりも含めて、この指標は政策担当者や投資家にとって見逃せない存在です。