米CPI加速で金利上昇、日経平均はNT倍率と決算が焦点
米国では4月の消費者物価指数が市場予想を上回り、原油高を背景にインフレ再加速への警戒が強まった。米長期金利は上昇し、半導体株の下落がナスダックやS&P500の重荷となった一方、ダウ平均は金融株に支えられて小幅高で取引を終えた。
日本市場では、円安と介入警戒が併存するなか、日米財務当局の連携や日銀の利上げ姿勢が焦点となっている。日経平均は6万円台で推移する一方、AI・半導体関連への物色の偏りやNT倍率の上昇が意識され、今後は決算内容が相場の裏付けになるかが問われる。
米CPIの上振れでインフレ再加速と米金利上昇が意識され、半導体株には利益確定売りが広がった。為替ではドル円157円台と介入警戒が焦点となり、日本株ではNT倍率の高止まりと主要企業決算が注目される。
4月CPIは3.8%上昇し、原油高を背景に市場予想を上回った。米10年債利回りは一時4.46%に上昇した。
ドル円は157円60銭台で推移。ドル高基調と日本政府・日銀による介入警戒感が併存している。
日経平均は6万円台で推移する一方、AI・半導体関連への偏りやNT倍率の上昇が意識されている。
米国金融政策・FRB
米CPIは3.8%上昇、原油高が物価を押し上げ
米国の4月消費者物価指数は前年同月比3.8%上昇し、市場予想を上回った。およそ3年ぶりの大きな伸びで、中東情勢の混乱に伴う原油高がインフレを加速させている。
変動の大きい食品とエネルギーを除いたコア指数は2.8%上昇し、こちらも市場予想を上回った。項目別では、ガソリンが28.4%上昇したほか、電気代が6.1%、交通サービスが4.3%それぞれ上昇した。
一方で、原油高の影響がコア指数全体に広がっているかについては、なお見方が分かれる。食品とエネルギーを除いた項目では、住居費が押し上げ要因となったとの指摘があり、統計上の特殊要因が今後落ち着く可能性もある。
インフレ再加速で利上げ観測が浮上
CPIの上振れを受け、米10年債利回りは一時4.46%に上昇した。市場では年末12月のFOMCでの利上げ予想が前日から10ポイント近く上昇し、およそ30%となった。
シカゴ連銀のグールズビー総裁は、インフレ圧力が米国経済全体に波及しているとの警戒感を示し、経済の過熱感が示されるなら、インフレの連鎖を断ち切る策を検討せざるを得ないとの考えを示した。金融引き締め的な政策の必要性が意識されやすい状況だ。
足元では、ホルムズ海峡の閉鎖が長期化するかどうかや、FRB人事を巡る不透明感も金融政策の見通しに影響している。インフレ期待が上向くようであれば、利上げへの見方がさらに強まる可能性がある。
米国市場・金利・商品
ダウは3日続伸、ナスダックとS&P500は反落
12日のニューヨーク株式市場では、ダウ平均が3日続伸し、56ドル高の4万9760ドルで取引を終えた。ナスダック総合指数は3日ぶりに反落し、185ポイント安の2万6088、S&P500も3日ぶりに反落し、11ポイント安の7400だった。
セクター別では、ヘルスケアや生活必需品が上昇した一方、一般消費財や情報技術が下落した。マイクロン・テクノロジーやインテルの株価が一時10%以上下落するなど、相場を押し上げてきた半導体関連株が全体の重荷となった。
インフレ再加速への警戒から利益確定売りが先行し、ダウ平均も一時400ドル近く下落する場面があった。ただ、金融株が買われたことで、プラス圏に転じた。
米債利回り上昇、原油先物は3日続伸
米国債市場では、CPIの発表を受けて利下げ期待が後退した。10年債利回りは4.463%、2年債利回りは3.991%から3.994%水準で推移した。
商品市場では、ニューヨーク原油先物が3日続伸した。米国とイランの交渉が難航するなか、4%以上上昇し、1バレル100ドルを超えた。金先物は続落した。
欧州市場はそろって反落した。英国ではスターマー首相への退陣圧力が強まるなか、金利上昇が株価の重荷となった。
消費者マインド悪化、米消費関連決算に明暗
5月のミシガン大学消費者信頼感指数は過去最低に低下した。中東情勢を受けたガソリン価格の高騰が主な要因とされ、関税の影響を指摘する声もある。インフレによる家計や購買環境への懸念が強まっている。
ゴールドマン・サックスのエコノミストは、今年の必需品以外への支出見通しを1月時点の5.1%増から3.7%増へ引き下げた。最も所得が低い層では、当初の3.2%増から0.8%増へ大幅に引き下げられており、家計の選別意識が強まっているとみられる。
企業決算では、消費関連で明暗が分かれた。マクドナルドの1-3月期決算では既存店売上高が前年比3.8%増と市場予想を下回り、コスト上昇リスクや6月期の既存店売上高減速見込みが嫌気された。一方、スターバックスは再建計画が軌道に乗り、既存店売上高が6.2%増と市場予想を上回った。来週以降は、ウォルマート、TJX、コストコホールセールなど価格競争力とブランド力を持つ企業の決算が注目される。
地政学・エネルギー
トランプ大統領が中国訪問へ、イラン情勢と貿易が焦点
トランプ大統領は12日、第二次政権で初となる中国訪問に向けて米国を出発した。米中首脳がイラン情勢をめぐり、どのような議論を交わすかが注目されている。
トランプ氏は出発前、習近平国家主席の支援は必要ないとし、米国はどのような手段を使ってでもイランに勝つと述べた。また、重要なのは貿易であり、イランではないとの認識も示した。
中国がイラン情勢への対応で協力する見返りに、貿易問題で米国に譲歩を迫ることを警戒し、牽制したものとみられる。市場では、会談後の見出し次第で相場が大きく動く可能性があるとの見方もある。
為替・円相場
ドル円は157円60銭台、介入警戒が上値を抑える展開
ドル円は157円60銭台で推移している。今日のドル円見通しは157円ちょうどから158円ちょうどで、イラン情勢を背景としたドル高基調を、日本政府・日銀による介入警戒感が抑える展開が想定されている。
ユーロ円は185円02銭から06銭、豪ドル円は114円08銭から18銭、英ポンド円は213円20銭から50銭、ブラジルレアルは32円20銭台、トルコリラは3円47銭台だった。中国人民元は本土市場で1ドル6.79元台の水準となっている。
日米財務当局が為替で連携、米側の理解も示唆
来日しているベッセント米財務長官は、高市総理大臣や片山財務大臣らと会談し、地域情勢や為替相場について議論した。高市総理とは、トランプ大統領の中国訪問や重要鉱物など経済安全保障について意見を交わした。
片山財務大臣との会談では、為替相場が議題となった。片山氏は、政府・日銀による為替介入について、米国側から理解が得られたことを示唆した。ベッセント氏は今日まで日本に滞在する予定で、日銀の植田総裁との会談も調整されている。
韓国の通貨安対応、日本円にも示唆
韓国国債は4月、FTSE社の世界国債指数に採用された。主要な国債市場としての認知が高まるイベントであり、韓国国債の国際的な投資魅力を高め、海外資金の流入基盤を広げる狙いがある。
2025年度の通貨騰落率では、日本円と韓国ウォンが下位にあり、どちらも欧米の先進国通貨に対して弱い「二弱通貨」との見方がある。韓国では、国民年金公団による対外投資に為替ヘッジを許容することや、国内投資家の資金還流促進策が検討されているとされる。
韓国の取り組みが奏功し、日本が取り残されれば、円だけが一段と弱含むリスクがあるとの指摘がある。
日本経済・日銀関連
日銀会合の主な意見、早期利上げ論が浮上
日銀が公表した先月の金融政策決定会合の主な意見で、早期に利上げに進むべきだという意見が出ていたことがわかった。日銀は先月の決定会合で政策金利を0.75%程度で据え置いたが、3人の委員が利上げを提案していた。
主な意見では、景気減速の明らかな兆候がない限り、早期に利上げに進むべきだとの意見や、中東情勢の不透明感が続いても、次回以降の決定会合で利上げ判断はあり得るとの意見があった。市場では、早ければ次回会合で利上げを決めるとの見方も広がっている。
日本の10年債利回りは2.545%、2.5%定着の可能性
日本の10年債利回りは2.545%だった。日本はなお利上げの途中にあるとの見方があり、欧米が利上げを終えた局面にあることとの違いが意識されている。
日本の名目GDP成長率は4.5%程度、潜在成長率を使った見方では3.8%程度とされ、インフレ目標2%を前提にした数値は2.4%程度となる。この見方では、10年債利回り2.5%という水準は一定程度説明できるとの指摘がある。
ただし、インフレが2%に安定することが前提であり、2%を上回るインフレが定着すれば、長期金利がさらに上昇する可能性がある。これは日本だけでなく、米国にも共通するリスクと考えられる。
景気ウォッチャー調査、先行き判断に注目
国内では今日、国際収支と景気ウォッチャー調査が発表される。景気ウォッチャー調査では、今年に入って先行き判断の落ち込みが大きく、原油価格の上昇や物価高が消費者心理を圧迫している。
今回の調査で回復の兆しが見えなければ、日銀の政策判断にも影響する可能性がある。マインド低下による消費の落ち込みも警戒点となる。
日本株・国内市場
日経平均先物は6万2500円台、今日の想定レンジは6万2000円から6万3000円
シカゴ日経平均先物は6万2500円、大阪取引所の夜間取引は6万2510円だった。先物取引の開始後には6万2715円となった。今日の日経平均の予想レンジは6万2000円から6万3000円とされる。
東京市場では、今週に入って高く寄り付いた後に値を保てない場面があり、買い疲れ感も出ている。外部環境次第では、5日移動平均線を下回る場面もあり得るとの見方がある。
12日の世界株では、中国上海総合指数が反落した。米中首脳会談の成果を見極めたいとの様子見姿勢が強く、利益確定売りが優勢だった。インドSENSEXは4日続落、ドイツDAX、英国FTSE、ブラジル・ボベスパも反落または続落した。
NT倍率は高水準、日経平均型への偏りに注意
日経平均をTOPIXで割って算出するNT倍率は、過去10年間で上下動しながら水準を切り上げている。足元では日経平均優位の状況が続いているが、NT倍率の上昇は物色対象が日経平均型に偏っていることを示す。
過去の経験則では、NT倍率が急上昇した後に日経平均の調整が長引くことがある。25日移動平均線からの乖離率を使った分析では、+6%近辺に接近または上回った局面で短期的なピークが見られたとの指摘がある。
日経平均優位の状況が続く可能性はある一方、今後はTOPIX優位へ変化する兆しも出始めている。相場の物色対象が変わる可能性に注意が必要だ。
2026年度日本株戦略、AI半導体から回復の広がりへ
日経平均が一時、史上初の6万3000円を突破した背景には、AI・半導体関連の上昇がある。上昇の大半は一部銘柄によるもので、日本株全体の時価総額を示すTOPIXは日経平均ほど上がっていない。NT倍率は16倍強と過去最高レベルにあり、相場には偏りがある。
AI・半導体相場は、シリコンサイクルの観点からまだ堅調な推移が期待できるとの見方がある。ただし、一部銘柄には買われすぎ感があり、短期的には急ピッチな上昇の反動で一服する可能性もある。
今後は、AIを作る側の半導体関連から、AIを使う側の企業へ焦点が移り、回復の波が日本株全体に広がる展開が想定されている。原油高やインフレは逆風である一方、製品価格を上げられる企業には価格転嫁の機会となる可能性がある。
大型バリュー株、価格転嫁、AI活用が選別の軸
2026年度の投資対象としては、割安に放置されている時価総額の大きい銘柄、原油高やインフレを逆手に取って製品価格を引き上げられる企業、AIを使いこなして生産性を高められる企業が注目されている。
ホンダは、時価総額が大きく流動性が高い大型株として取り上げられた。PBRは0.39倍から0.4倍程度とされ、歴史的な低水準にある。一方で、EV戦略の見直しに伴う構造改革費用の計上により、前期は大幅赤字、今期も利益低迷が続く見通しとされる。二輪事業の好調や北米のハイブリッド車を中心とした回復余地、自動運転技術の自社開発などが中長期の注目点となる。
SOMPOホールディングスは、日本の損保セクターに対する世界基準の再評価が背景にある。東京海上ホールディングスとバークシャー・ハサウェイの資本提携をきっかけに、日本の損保セクターへ海外投資家の視線が集まっている。SOMPOは米パランティアとの提携によるAI・ビッグデータ活用や、パランティア株の含み益、PBRが東京海上の2.6倍程度に対して1倍程度にとどまる点が注目されている。
企業・サービス
イーベイがゲームストップの買収提案を拒否
米電子商取引大手イーベイは12日、ゲーム販売大手ゲームストップによる買収提案を拒否したと明らかにした。ゲームストップ側の提案について、信頼性に欠け、魅力的でもないとし、資金調達への不安や統合後の事業運営に支障が出るリスクを指摘した。
ゲームストップは3日、時価総額が自社の4倍に上るイーベイをおよそ560億ドル、8兆8000億円で買収する計画を発表していた。
ルフトハンザ、ITAエアウェイズ出資を90%へ
ドイツのルフトハンザ航空は12日、イタリアの同業ITAエアウェイズへの出資比率を、来年3月までに現在の41%から90%に引き上げると発表した。3億2500万ユーロ、およそ600億円を投じ、イタリア政府が持つITA株を追加で取得する。
取得後はITAの財務などをルフトハンザに統合する。2028年をめどに、残る10%の株式も取得する可能性がある。
国内企業で統合・TOB・品質不正のニュース
機械部品大手の日本精工とNTNは、経営統合に基本合意したと発表した。来年10月に共同持株会社を設立する想定で、統合が実現すれば、主力商品である機械部品のベアリングで世界トップクラスのメーカーとなる見通しだ。
飲食店情報サイト「食べログ」などを運営するカカクコムは、スウェーデンに本社を置く投資ファンドEQTによる買収提案に賛同すると発表した。買収総額は5900億円規模で、EQTは今日からTOBを実施し、非公開化を目指す。カカクコムをめぐっては、LINEヤフーと米投資ファンドのベインキャピタルの連合も初期的な買収提案をしている。
ニデックのモーター部品などをめぐっては、顧客の許可を得ない設計変更や検査データ改ざんなどの品質不正が行われていた疑いがあることがわかった。社内の内部調査で発覚したもので、不正の疑いは本社や子会社などで1000件を超える見込みだという。ニデックは外部の弁護士らで構成する調査委員会を立ち上げ、全容解明を目指す。
オープンAI訴訟、アルトマンCEOが原告側主張を否定
イーロン・マスク氏がオープンAIを訴えた裁判で、オープンAI側のアルトマンCEOが証言し、マスク氏を裏切ったとする原告側の主張を否定した。
裁判では、オープンAIが設立当初、非営利団体としてマスク氏に出資を募ったにもかかわらず、その後、資金を営利目的で使ったことは裏切り行為だとして、巨額の賠償が請求されている。アルトマン氏は、マスク氏は当時、営利部門の設立に前向きで、そのトップ就任や支配権も望んでいたと証言した。
今日の主な予定
国内外の経済指標・決算・首脳外交
国内では、国際収支と景気ウォッチャー調査が発表される。景気ウォッチャー調査は、物価高や原油高による消費者心理への影響を確認する材料となる。
企業決算では、ソフトバンクグループや日産自動車などの発表が予定されている。このほか、大林組、SCREENホールディングス、三井住友フィナンシャルグループ、三菱地所なども注目されている。
海外では、トランプ大統領が中国・北京を訪問する。イラン情勢や貿易問題をめぐる米中首脳会談の内容が、週末にかけて市場の材料となる可能性がある。

