米国企業決算に見るAI需要と市場の選別|Palantir、onsemi、Vertex、Diamondbackの2026年1〜3月期決算
2026年5月4日に発表された米国企業決算では、AIソフトウェア、半導体、バイオ医薬品、エネルギーという異なる分野の企業が、それぞれの市場環境を映す内容となった。対象は、Palantir Technologies(PLTR)、onsemi(ON)、Vertex Pharmaceuticals(VRTX)、Diamondback Energy(FANG)の4社である。
今回の決算を横断して見ると、最も目立つテーマはAI関連需要の広がりである。Palantirでは米国商業・政府向けのAIソフトウェア需要が売上を押し上げ、onsemiではAIデータセンター向け売上の拡大が確認された。一方で、Vertexは嚢胞性線維症治療薬を中心とした医薬品ポートフォリオの安定性と、新製品の立ち上がりが焦点となった。Diamondback Energyは、米国エネルギー生産、設備投資、フリーキャッシュフロー、株主還元が主な論点である。
本稿では、各社の決算数値を土台に、主要メディアの評価も加えながら、個別企業の投資判断ではなく、経済・市場テーマとして今回の決算を整理する。
主要企業の決算概要
Palantir Technologies(PLTR)
- 対象期間
- 2026年第1四半期
- 売上高
- 16.33億ドル
- GAAP純利益
- 8.71億ドル
- EPS
- GAAP EPS 0.34ドル、調整後EPS 0.33ドル
- 主な焦点
- 米国売上104%増、通期売上高見通しを76.50億〜76.62億ドルへ引き上げ
onsemi(ON)
- 対象期間
- 2026年第1四半期
- 売上高
- 15.13億ドル
- 純利益
- GAAP純損失0.33億ドル、non-GAAP純利益2.53億ドル
- EPS
- GAAP希薄化後EPS -0.08ドル、non-GAAP希薄化後EPS 0.64ドル
- 主な焦点
- AIデータセンター売上、フリーキャッシュフロー2.17億ドル、自社株買い3.46億ドル
Vertex Pharmaceuticals(VRTX)
- 対象期間
- 2026年第1四半期
- 総収益
- 29.87億ドル
- 純利益
- GAAP純利益10.31億ドル、non-GAAP純利益11.47億ドル
- EPS
- GAAP希薄化後EPS 4.02ドル、non-GAAP希薄化後EPS 4.47ドル
- 主な焦点
- 製品売上、非CF製品、通期売上高見通し129.5億〜131.0億ドルを維持
Diamondback Energy(FANG)
- 対象期間
- 2026年第1四半期
- 総収益
- 42.40億ドル
- GAAP純利益
- 0.25億ドル
- EPS
- GAAP希薄化後EPS 0.08ドル、調整後EPS 4.23ドル
- 主な焦点
- 平均石油生産量521.0 MBO/d、フリーキャッシュフロー17億ドル、設備投資9.33億ドル
Palantir Technologies(PLTR)|AI需要は強いが、株価評価は慎重
Palantir Technologies(PLTR)は、政府機関や企業向けにデータ分析・AI関連ソフトウェアを提供する企業である。今回の決算では、売上高が16.33億ドル、GAAP純利益が8.71億ドルとなり、米国事業の成長が際立った。
米国売上高は12.82億ドルで前年同期比104%増、米国商業売上高は5.95億ドルで同133%増、米国政府売上高は6.87億ドルで同84%増だった。AIソフトウェア需要が民間企業と政府機関の両方で拡大している点が、今回の決算の中心である。
会社は2026年通期売上高見通しを76.50億〜76.62億ドルへ引き上げた。米国商業売上高見通しも32.24億ドル超、成長率120%以上へ引き上げており、会社側はAI関連需要の継続に自信を示した形である。
Palantir Technologies(PLTR)の主要数値
- 売上高
- 16.33億ドル
- 米国売上高
- 12.82億ドル
- 米国商業売上高
- 5.95億ドル
- 米国政府売上高
- 6.87億ドル
- GAAP営業利益
- 7.54億ドル
- 調整後営業利益
- 9.84億ドル
- GAAP純利益
- 8.71億ドル
- GAAP EPS
- 0.34ドル
- 調整後EPS
- 0.33ドル
- 営業キャッシュフロー
- 8.99億ドル
- 調整後フリーキャッシュフロー
- 9.25億ドル
- 2026年通期売上高見通し
- 76.50億〜76.62億ドルへ引き上げ
メディア評価では、Barron’sが、売上高、調整後営業利益率、フリーキャッシュフローなど主要指標が市場予想を上回った一方、米国商業売上高が一部の市場予想を下回ったことや、株価バリュエーションへの警戒が株価下落につながったと整理している。
評価された点は、AI需要を背景にした高成長と通期見通しの引き上げである。一方、懸念された点は、成長の強さをかなり織り込んだ株価水準と、今後も同じペースで成長を維持できるかという点である。
Palantirの決算は、AI関連企業に対する市場の見方が単純な「成長評価」から、「成長率と株価評価のバランス」へ移っていることを示している。今後は、米国商業向け売上の持続性、政府案件の継続性、AIプラットフォームの導入が実際の収益にどこまで結びつくかが確認点となる。
onsemi(ON)|自動車・AIデータセンター需要に回復の兆し
onsemi(ON)は、電力・センシング半導体を手がける半導体企業である。自動車、産業、AIデータセンター向け市場に製品を提供しており、今回の決算では半導体サイクルの底入れ感と、成長分野への需要が注目された。
2026年第1四半期の売上高は15.13億ドルで、前年同期の14.46億ドルから5%増加した。セグメント別では、PSGが7.37億ドル、AMGが5.40億ドル、ISGが2.36億ドルだった。
利益面では、GAAP営業マージンがマイナス3.5%、GAAP純損失が0.33億ドル、GAAP希薄化後EPSがマイナス0.08ドルだった。一方、non-GAAP営業マージンは19.1%、non-GAAP純利益は2.53億ドル、non-GAAP希薄化後EPSは0.64ドルだった。GAAPベースでは赤字だが、調整後では黒字を維持しており、一時的・調整項目を除いた収益力の見方が重要になる。
事業面では、AIデータセンター売上が前年同期比で2倍超、前四半期比で30%超増加したことが確認されている。会社は2026年第2四半期について、売上高15.35億〜16.35億ドル、GAAP希薄化後EPS 0.60〜0.72ドル、non-GAAP希薄化後EPS 0.65〜0.77ドルを見込んでいる。
onsemi(ON)の主要数値
- 売上高
- 15.13億ドル
- PSG売上高
- 7.37億ドル
- AMG売上高
- 5.40億ドル
- ISG売上高
- 2.36億ドル
- GAAP粗利益率
- 38.5%
- GAAP営業マージン
- -3.5%
- non-GAAP営業マージン
- 19.1%
- GAAP純損失
- 0.33億ドル
- non-GAAP純利益
- 2.53億ドル
- GAAP希薄化後EPS
- -0.08ドル
- non-GAAP希薄化後EPS
- 0.64ドル
- 営業キャッシュフロー
- 2.39億ドル
- フリーキャッシュフロー
- 2.17億ドル
- 自社株買い
- 3.46億ドル
- 2026年第2四半期売上高見通し
- 15.35億〜16.35億ドル
Reutersは、onsemiが市場予想を上回る第2四半期売上高見通しを示した背景として、自動車向け需要の底堅さ、とくに電気自動車の航続距離向上に関わるシリコンカーバイド半導体需要の回復を挙げている。
評価された点は、自動車向け需要の回復とAIデータセンター向け需要の伸びである。一方、懸念点は、半導体市況がまだ完全回復とは言い切れず、自動車・産業向け需要の回復がどこまで持続するかである。
onsemiの決算では、GAAPベースの純損失とnon-GAAPベースの黒字に差がある。non-GAAPは一定の調整を加えた指標であり、GAAP指標とは意味が異なるため、利益水準を比較する際には注意が必要である。
onsemiの決算は、AIデータセンターだけでなく、自動車や電力制御分野でも半導体需要の回復が意識され始めていることを示している。ただし、GAAP赤字とnon-GAAP黒字の差が大きいため、収益の質や調整項目の中身は今後も確認が必要である。
Vertex Pharmaceuticals(VRTX)|主力CF薬は堅調、新製品の成長余地が焦点
Vertex Pharmaceuticals(VRTX)は、嚢胞性線維症、鎌状赤血球症、輸血依存性ベータサラセミア、急性疼痛などを対象とする医薬品を開発・販売するバイオテクノロジー企業である。
2026年第1四半期の総収益は29.87億ドルで、前年同期比8%増だった。米国収益は17.8億ドル、米国外収益は12.1億ドルである。製品別では、TRIKAFTA/KAFTRIOが23.55億ドル、ALYFTREKが4.24億ドル、CASGEVYが0.43億ドル、JOURNAVXが0.28億ドルだった。
GAAP純利益は10.31億ドル、GAAP希薄化後EPSは4.02ドル、non-GAAP純利益は11.47億ドル、non-GAAP希薄化後EPSは4.47ドルだった。2026年3月31日時点の現金、現金同等物、短期有価証券などは130億ドルで、財務基盤の厚さも確認できる。
会社は2026年通期の総収益見通しを129.5億〜131.0億ドルで維持した。非CF製品売上高は5億ドル以上を見込んでおり、ALYFTREK、CASGEVY、JOURNAVXの成長が今後の焦点となる。
Vertex Pharmaceuticals(VRTX)の主要数値
- 総収益
- 29.87億ドル
- 米国収益
- 17.8億ドル
- 米国外収益
- 12.1億ドル
- TRIKAFTA/KAFTRIO売上高
- 23.55億ドル
- ALYFTREK売上高
- 4.24億ドル
- CASGEVY売上高
- 0.43億ドル
- JOURNAVX売上高
- 0.28億ドル
- GAAP純利益
- 10.31億ドル
- non-GAAP純利益
- 11.47億ドル
- GAAP希薄化後EPS
- 4.02ドル
- non-GAAP希薄化後EPS
- 4.47ドル
- 現金・現金同等物・市場性証券
- 130億ドル
- 2026年通期総収益見通し
- 129.5億〜131.0億ドルで維持
Reutersは、Vertexが第1四半期の調整後利益で市場予想を上回った一方、総収益は市場予想をやや下回ったと報じている。特に新しい嚢胞性線維症治療薬ALYFTREKの売上急増が評価された一方、従来主力薬TRIKAFTAの売上が市場予想を下回った点が注目された。
Investor’s Business Dailyも、決算はやや強弱が分かれる内容だったと整理している。調整後EPSは市場予想を上回ったが、売上はおおむね予想並みにとどまり、JOURNAVXやCASGEVYの売上は一部予想を下回った。ただし、腎臓病領域などパイプラインへの期待は残っているとされる。
Vertexで評価された点は、嚢胞性線維症領域における強い事業基盤と、ALYFTREKの立ち上がりである。一方、懸念された点は、非CF製品が本格的な収益柱となるまでには時間がかかる可能性である。今後は、JOURNAVXやCASGEVYの処方・投与ペース、非CF領域の売上拡大、パイプライン進展が確認点となる。
Diamondback Energy(FANG)|生産見通しを引き上げ、キャッシュフローと還元が焦点
Diamondback Energy(FANG)は、米国テキサス州ミッドランドに本社を置き、主にパーミアン盆地で石油・天然ガス資源の取得、開発、探鉱、生産を行うエネルギー企業である。
2026年第1四半期の総収益は42.40億ドル、石油・天然ガス・NGL販売は38.25億ドルだった。平均石油生産量は521.0 MBO/d、平均総生産量は979.4 MBOE/dである。営業活動によるキャッシュフローは18億ドル、運転資本変動前営業キャッシュフローは26億ドルだった。
現金ベースの資本支出は9.33億ドル、フリーキャッシュフローは17億ドル、調整後フリーキャッシュフローも17億ドルだった。GAAP純利益は0.25億ドル、GAAP希薄化後EPSは0.08ドルである。一方、調整後純利益は11.98億ドル、調整後EPSは4.23ドルとなっており、GAAPと調整後指標の差が大きい点には注意が必要である。
株主還元では、普通株330万株を約5.48億ドルで買い戻した。基本現金配当は1株1.10ドルへ引き上げられ、会社側は前年同期比10%増と説明している。通期見通しでは、年間石油生産量を520 MBO/d超へ、総生産量を972 MBOE/d超へ引き上げた。通期の現金ベース資本支出見通しも約39.0億ドルへ引き上げられている。
Diamondback Energy(FANG)の主要数値
- 総収益
- 42.40億ドル
- 石油・天然ガス・NGL販売
- 38.25億ドル
- 平均石油生産量
- 521.0 MBO/d
- 平均総生産量
- 979.4 MBOE/d
- 営業活動によるキャッシュフロー
- 18億ドル
- 運転資本変動前営業キャッシュフロー
- 26億ドル
- 現金ベース資本支出
- 9.33億ドル
- フリーキャッシュフロー
- 17億ドル
- 調整後フリーキャッシュフロー
- 17億ドル
- GAAP純利益
- 0.25億ドル
- GAAP希薄化後EPS
- 0.08ドル
- 調整後EPS
- 4.23ドル
- 自社株買い
- 5.48億ドル
- 基本現金配当
- 1株1.10ドルへ引き上げ
- 2026年通期石油生産見通し
- 520 MBO/d超へ引き上げ
- 2026年通期総生産見通し
- 972 MBOE/d超へ引き上げ
Reutersは、Diamondbackが2026年通期の生産見通しを引き上げたこと、総生産量を従来予想の926,000〜962,000 boepdから972,000 boepd超へ引き上げたことを報じている。同時に、通期資本支出見通しも従来の37.5億ドルから約39億ドルへ引き上げられた。
評価された点は、生産量の強さ、フリーキャッシュフロー、増配、自社株買いである。一方、懸念点は、増産・生産見通しの引き上げと同時に設備投資も増える点である。原油価格が下振れした場合、投資額、キャッシュフロー、株主還元のバランスが改めて問われる可能性がある。
Diamondback Energyの決算では、GAAP純利益およびGAAP希薄化後EPSと、調整後純利益および調整後EPSの差が大きい。調整後指標は、会社が一定の項目を除外して算出する指標であり、GAAP指標とは異なる見方が必要である。
決算から見える経済テーマ
AI投資はソフトウェアと半導体の両面に広がる
今回の4社を並べると、最初に浮かび上がるのはAI投資の広がりである。PalantirではAIソフトウェア需要が米国商業・政府向けに広がり、onsemiではAIデータセンター向け半導体需要が伸びた。AIは単に半導体メーカーだけのテーマではなく、ソフトウェア、データ分析、データセンター、電力制御部品にまで波及している。
クラウドとデータ活用は成長期待と株価評価の両面で見られている
クラウドやデータ活用の面では、Palantirの成長が象徴的である。企業や政府機関が保有するデータをAIで活用する需要が拡大しており、同社の高成長はその流れを反映している。ただし、市場はすでに高い成長期待を織り込んでおり、決算が良くても株価が素直に上昇しない局面がある。これはAI関連株全体に共通する確認点である。
半導体ではAI向けと自動車・産業向けの回復が同時に問われる
半導体では、onsemiの決算が自動車、産業、AIデータセンターの3つの需要を映している。AIデータセンター向けは成長分野だが、同社にとっては自動車向け半導体、とくに電力制御やシリコンカーバイド関連も重要である。半導体市場では、AI向けの強さと、自動車・産業向けの循環回復が同時に問われている。
医薬品では主力薬の安定性と新製品の育成が焦点
医薬品では、Vertexが主力CF治療薬に支えられながら、非CF領域への展開を進めている。JOURNAVXやCASGEVYは、将来の収益多角化を担う可能性がある一方、短期的には売上規模がまだ限られている。バイオ医薬品企業では、既存薬の安定収益と新製品・パイプラインの成長期待を分けて見る必要がある。
エネルギーでは生産拡大と株主還元のバランスが重要
エネルギーでは、Diamondbackの決算が米国シェール企業の現在地を示している。生産量を増やしながら、フリーキャッシュフローを確保し、増配と自社株買いを実施している点は評価材料である。一方で、設備投資見通しの引き上げは、原油価格や掘削コストの変動に対する感応度を高める可能性がある。
まとめ
今回の決算では、AI関連需要の強さが引き続き確認された。Palantirは米国商業・政府向けのAIソフトウェア需要を背景に通期見通しを引き上げ、onsemiはAIデータセンター向けと自動車向け需要に回復の兆しを示した。
一方で、市場の評価は単純ではない。Palantirのように決算内容が強くても、株価評価の高さが意識されれば慎重な反応となる。onsemiでは需要回復が評価される一方、GAAPベースの赤字や半導体サイクルの持続性が確認点となる。Vertexでは主力薬の安定性と新製品の成長余地、Diamondbackでは生産拡大とキャッシュフロー、設備投資のバランスが焦点である。
今回の4社決算からは、AI、半導体、医薬品、エネルギーという異なる分野で、それぞれ成長期待と確認すべきリスクが併存していることが読み取れる。市場は高成長そのものだけでなく、その成長がどれだけ持続可能で、現在の株価や投資額に見合うものかを選別し始めている。
本記事は、企業の決算資料および公開情報をもとに、経済・市場テーマを整理したものであり、特定の個別銘柄の売買を推奨するものではない。non-GAAP、調整後EPS、調整後フリーキャッシュフローなどは各社が一定の調整を加えた指標であり、GAAP指標とは意味が異なるため、比較時には注意が必要である。

