公的年金の保険料はいくら? 国民年金と厚生年金の負担の違いを解説

公的年金の保険料は、働き方や立場によって金額も仕組みも大きく異なる。国民年金は原則として定額だが、厚生年金は給与や賞与の水準に応じて変わる。さらに、会社員や公務員であれば保険料の半分を勤務先が負担し、専業主婦(夫)など一定の条件を満たす人は本人が保険料を直接納付しない。「結局いくら払うのか」「会社員と自営業でなぜ違うのか」という疑問に、この記事でそれぞれ答えていく。

目次

国民年金保険料の基本

国民年金は、20歳以上60歳未満のすべての人が加入する年金制度の土台だ。この国民年金の保険料は、令和8年度(2026年度)で月額17,920円に設定されている。

国民年金保険料の特徴は「定額」である点だ。収入が多くても少なくても、原則として同じ金額を納める。主に納める義務があるのは、自営業者や学生、無職の人などが該当する「第1号被保険者」と呼ばれる人たちだ。

自営業者など第1号被保険者が全額を自分で納めるのに対し、会社員や公務員である第2号被保険者は厚生年金に加入しており、国民年金保険料を別途納める必要はない。厚生年金の保険料の中に、国民年金の費用も含まれる仕組みになっているためだ。

厚生年金保険料は「収入に連動する」

厚生年金は、会社員や公務員など、会社や組織に雇用されている人が加入する年金だ。現在の厚生年金の保険料率は18.3%で、現行制度では固定されている。

ただし、保険料は給与や賞与の金額をそのまま使って計算するわけではない。実際には「標準報酬月額」や「標準賞与額」という、計算用の金額に置き換えてから算出する。シンプルに言えば、厚生年金は収入が高いほど保険料も増える構造になっている。

国民年金が収入に関係なく定額であるのに対し、厚生年金は収入水準に応じて保険料が変動する。これが両者の最も大きな違いだ。

厚生年金は会社と本人が折半する

厚生年金保険料のもう一つの重要な特徴が、保険料を会社と本人で半分ずつ負担する「労使折半(ろうしせっぱん)」の仕組みだ。

給与明細に記載される「厚生年金保険料」の金額は、あくまで本人の負担分だけを示している。実際にはその同額程度を、会社も別途負担している。つまり、会社員が保険料として全額を自己負担しているわけではない。

たとえば標準報酬月額が30万円の場合、保険料率18.3%を掛けると合計54,900円になるが、本人の給与から天引きされるのはその半分の27,450円で、残り27,450円は会社が支払う。第1号被保険者が保険料を全額自己負担するのに対し、第2号被保険者は本人の直接負担が半分になる仕組みだ。

第3号被保険者に保険料負担がないのはなぜか

「専業主婦(夫)は年金保険料を払っていないのに、将来は年金をもらえるのか」という疑問は多い。結論から言えば、第3号被保険者は本人が保険料を直接納める必要はなく、それでも将来の年金に反映される。

第3号被保険者とは、第2号被保険者に扶養される20歳以上60歳未満の配偶者で、原則として年収130万円未満の人を指す。専業主婦や、一定の収入未満で働く配偶者などが該当する。ただし、年収が130万円未満でも厚生年金の加入要件に当てはまる場合は、第3号被保険者にはならない。

本人負担がないのは「無料」ということではなく、第2号被保険者全体が納める厚生年金保険料の中から、国民年金の費用をまかなう仕組みになっているためだ。つまり、第2号被保険者全体で制度を支えている構造が背景にある。

また、第3号被保険者の期間は、老齢基礎年金額の計算上、保険料納付済期間として扱われる。ただし、第3号被保険者になれるかどうかは、配偶者の働き方や本人の収入など一定の要件があるため、自分の状況を確認しておくことが大切だ。

標準報酬月額と標準賞与額とは何か

厚生年金保険料の計算に使われる「標準報酬月額」と「標準賞与額」は、少しわかりにくい言葉だが、要は「保険料を計算するための目安の金額」だと理解すればよい。

標準報酬月額は、実際の税引き前の給与を、一定の幅ごとに区分した金額のことだ。最も低い等級は月額8万8千円で、最高等級は65万円に設定されている。給与が65万円を超えても、保険料の計算上の上限は65万円になる。

標準賞与額は、税引き前のボーナス(賞与)から1,000円未満を切り捨てた金額で、1回の支給につき上限は150万円だ。

これらを使う理由は、実際の給与額は毎月細かな差が出やすいため、一定の区切りをつけて保険料額を計算しやすくするためだ。「実際の給与やボーナスをそのまま使うのではなく、計算しやすい形に置き換えている」とイメージするとわかりやすい。

項目概要上限
標準報酬月額税引き前の給与をもとに算出した計算用の月額65万円(32等級)
標準賞与額税引き前の賞与から1,000円未満を切り捨てた金額1回150万円

出産時や育休中は保険料がどうなるか

出産や育児の時期には、保険料の負担が軽くなる制度がある。国民年金と厚生年金でそれぞれ仕組みが異なるので、整理して覚えておきたい。

国民年金(第1号被保険者)の場合

国民年金に加入する第1号被保険者には、産前産後期間の保険料免除制度がある。免除の対象期間は、出産予定日または出産日が属する月の前月から4カ月間だ。双子など多胎妊娠の場合は、3カ月前から6カ月間になる。この免除期間は、将来の年金額の計算上、保険料を納めた期間として扱われるため、将来の受給額が減るわけではない。

厚生年金(第2号被保険者)の場合

厚生年金に加入する会社員や公務員は、産前産後休業の期間中、および3歳未満の子を養育するための育児休業等期間で一定の要件を満たす場合、本人分の保険料だけでなく事業主負担分も含めて免除になる。この免除期間も、将来の年金額の計算では不利に扱われない。

出産や育児という人生の大きな節目に、保険料の負担を軽くする仕組みが用意されていることは、知っておきたいポイントだ。

納付期限、前納、口座振替の基本

国民年金保険料(第1号被保険者が対象)の納付期限は、原則として「対象月の翌月末日」だ。末日が土日祝日や年末年始に当たる場合は、翌営業日が期限になる。たとえば2026年4月分の保険料は、5月31日が日曜日のため、実際の期限は2026年6月1日になる。

毎月1カ月ずつ払う方法以外に、まとめて前払いする「前納」という選択肢もある。前納を利用すると、通常よりも保険料を少し安くできる。令和8年度の金額(口座振替の場合)は次の通りだ。

納付方法令和8年度の金額(口座振替)
毎月納付(通常)月額17,920円
当月末振替(早割)月額17,860円(月60円割引)
6カ月前納106,300円(1,220円割引)
1年前納210,530円(約4,510円割引)
2年前納417,150円(17,370円割引)

前納の期間が長くなるほど割引額も大きくなる。口座振替のほか、納付書による現金払い、クレジットカード払いでも前納は可能だが、割引額は口座振替とやや異なる。納付方法の選択肢は、日本年金機構の窓口やウェブサイトで確認できる。

公的年金の保険料を理解するときのポイント

この記事で整理した内容を、改めて6点にまとめる。

  • 国民年金は定額:令和8年度は月額17,920円で、原則として同額
  • 厚生年金は収入連動:保険料率18.3%で、標準報酬月額・標準賞与額をもとに算出
  • 厚生年金は会社と本人が折半:給与明細に出る金額は本人負担分のみ
  • 第3号被保険者には本人負担がない:扶養される配偶者など一定の条件を満たす人が対象
  • 出産・育休中には免除制度がある:国民年金・厚生年金ともに将来の受給に不利にならない
  • 前納や口座振替で割引がある:長期前納ほど割引額が大きくなる

自分がどの区分に当てはまるのかを意識しながら読むと、保険料の仕組みの違いがつかみやすくなる。

詳しく知りたい人へ

年金の保険料を理解したうえで、次のステップとして以下のテーマも参考にしたい。

  • 第1号・第2号・第3号被保険者の違い:自分がどの区分に当てはまるかの整理
  • 免除・猶予・追納:収入が少ない時期の保険料免除や、後から納める追納の仕組み
  • 老齢年金・障害年金・遺族年金:それぞれの年金がどのような場合に受け取れるか
  • 年金の受け取り手続き:受給開始年齢や繰上げ・繰下げ受給の仕組み

制度や金額を確認するときは、日本年金機構の公開情報をあわせて見ると理解しやすい。

(本稿は各種公開情報をもとに作成しました。一部数値は記事掲載時点の情報です)

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この記事を書いた人

CFP®/1級ファイナンシャルプランニング技能士
公益社団法人 日本証券アナリスト協会認定
・プライマリー・プライベートバンカー
・資産形成コンサルタント
一般社団法人金融財政事情研究会認定
・NISA取引アドバイザー

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