ホルムズ海峡で日本関係船の通航にわずかな動きが出ている。4月6日までに、商船三井(9104)の関連会社が保有するインド船籍のLPG(液化石油ガス)運搬船「GREEN ASHA」が海峡を通過し、ペルシャ湾外へ出た。日本関係船の通過は3隻目となったが、金子恭之国土交通相によると、なお42隻が湾内に残り、日本人船員20人も乗船したままだ。見えてきたのは正常化というより、限定的な通航再開にとどまる現実である。
3隻に共通するのは商船三井系のガス船
今回通過が確認されたGREEN ASHAはLPG船で、日本人船員は乗っていない。これまで通過が確認された3隻は、1隻目のLNG船「SOHAR LNG」、2隻目のLPG船「Green Sanvi」、3隻目のGREEN ASHAと、いずれも商船三井系のガス輸送船だ。
この共通点は重い。通航再開が全面的に広がっているのではなく、日本のエネルギー物流に関わるガス船から個別に動きが出ていることを示しているためだ。少なくとも現時点では、原油タンカーやコンテナ船を含む幅広い日本関係船に通航が広がったとは言えない。
世界の石油・LNG供給の約2割が通る要衝
ホルムズ海峡は、ペルシャ湾とアラビア海をつなぐ細い海上交通路で、世界の石油・LNG供給の約2割が通る要衝である。サウジアラビア、アラブ首長国連邦、クウェート、イラク、カタールなど湾岸産油・産ガス国の輸出は、この海峡への依存度が高い。
日本にとっても重要性は大きい。原油はもちろん、LNGは発電や都市ガス、LPGは家庭用・業務用燃料や化学原料を支える。ホルムズ海峡の混乱は、日本のエネルギー安定供給と物価の双方に直結する。
通れる船はなお限られる
ただ、海峡が全面的に「開いた」とみるのは早い。ロイターやブルームバーグの報道からは、通航が認められているのは一部の船にとどまり、非敵対的とみなされた船や個別調整がついた船から動いているように見える。
その不安定さを示す例も出ている。ロイターによれば、カタールから積み出したLNG船2隻は、いったん海峡通航に向けて動いた後、停止を命じられた。通れるかどうかは固定的なルールではなく、政治・外交情勢に大きく左右される局面が続いている。
42隻と20人がなお湾内に残る
4月6日時点で湾内に残る日本関係船は42隻、日本人船員は20人に上る。3隻が通過したこと自体は前進だが、数字だけを見れば大半の船はなお動けていない。事態の中心は「再開」より「残留」にある。
政府も警戒を緩めていない。金子国土交通相は6日、船員と船舶の安全確保を最優先に情報収集を徹底する考えを示した。公表ベースでは、なお慎重な対応が続いている。
エネルギー価格と世界経済にも火種
影響は海運だけにとどまらない。IMF(国際通貨基金)の専務理事クリスタリナ・ゲオルギエワ氏は4月6日、中東情勢の緊迫が世界経済に高インフレ・低成長の圧力をもたらすとの見方をロイターに示した。ホルムズ海峡を通るエネルギー物流の不安定さが長引けば、日本でも燃料コストや国内物価への波及が避けにくくなる。
3隻通過でも正常化とは言えない
日本関係船3隻目の通過は、確かに前向きな材料である。ただ、それだけで自由航行の回復を意味するわけではない。3隻に共通する船種と運航主体、通航が一部の船に限られていること、そして42隻と20人がなお湾内に残っている現実を合わせてみれば、ホルムズ海峡はまだ通常運転に戻ったとは言えない。いま進んでいるのは、個別調整を前提にした限定通航の局面である。
(本稿は各種公開情報をもとに作成しました。一部数値は記事掲載時点の情報です)

