通信大手のKDDI(9433)が、傘下の子会社2社におけるインターネット広告代理事業を廃止する方針を固めた。NHKなどの報道によると、3月末に会見を開き、特別調査委員会の報告書と再発防止策が公表される予定で、経営責任も焦点のひとつとなる見通しだ。
しかし今回の問題を、NHKなどが伝える「社員2人の不正」として読み解くだけでは足りない。KDDIは不正を起こした人間への対処だけでなく、不正が起きた事業モデルそのものを廃止するという判断に踏み込んだ。その背景には、通信会社が広告・ポイントといった周辺のマネタイズ領域を抱えたとき、いかに統制が難しいかという本質的な問いがある。
何が起きたのか——数字の意味を整理する
今回の問題は、KDDIの子会社「BIGLOBE(ビッグローブ)」と、そのさらに下の子会社「G-PLAN(ジー・プラン)」のインターネット広告代理事業で起きた。KDDIの開示では直近3事業年度にまたがる影響が示されており、広告主が実在しない架空の取引が繰り返されたとされている。同社が公表した影響額は以下のとおりだ。
- 売上高の過大計上:約2460億円
- 営業利益への影響:約500億円
- 外部への資金流出の可能性:約330億円
この3つの数字は、それぞれ意味が異なる。2460億円は売上の見かけ上の膨らみであり、実際の損益面での影響は約500億円、現金流出の可能性は約330億円として、それぞれ分けて捉える必要がある。「2460億円の被害」という読み方は実態を誇張しており、数字の中身を見ることが重要だ。

NHKなどによると、関与したとみられるのは2社の業務を兼務していた社員2人だ。外部の広告代理店とともに広告主が実在しない業務を発注し、2社の間で資金を還流させ、手数料の一部を外部に流出させたとみられている。
なぜ広告代理事業で架空取引が膨らむのか
広告代理事業は、商流が多層化しやすく、架空計上や循環取引を見抜きにくい面がある。広告主、代理店、再委託先、媒体社など関係者が重なり、成果報酬や手数料の計算が複雑なため、実在する案件かどうかを外から確認しにくい。売上の計上と資金の流れを別々に検証しなければ異常を見抜けない場合がある。
BIGLOBEはインターネットプロバイダーとして知られるが、広告代理事業も手がけていた。G-PLANはポイント事業、メディア事業、広告代理事業を束ねる「マーケティングソリューション」会社だ。どちらも通信回線そのものではなく、その周辺に位置する「成果連動・中抜き構造が複雑になりやすい領域」を担っていた。
こうした事業では、親会社からの統制が届きにくく、管理の穴が生まれやすい。今回の問題は、「悪意ある社員がいた」という話である以上に、「そういう構造を監督できなかった」という体制の失敗として見る必要がある。
廃止という判断の意味
KDDIは、不正が確認された2社の広告代理事業そのものを廃止する方針だ。この判断は「再発防止策」として説明されるだろうが、それだけではないとみられる。
広告代理事業はKDDIにとって通信回線のような中核競争力ではない。管理が難しく、かつ不正の舞台にもなった事業を抱え続けることには、合理的な理由が薄い。今回の廃止は、不祥事の後始末であると同時に、非中核事業を整理するタイミングとしても機能している側面があると読める。
ただし、事業を廃止すれば問題が解決するわけではない。KDDIという親会社が、複数年にわたる架空取引をなぜ把握できなかったのか——会計監査、内部統制、内部監査がどこで機能しなかったのか——という問いは、事業廃止とは別に残り続ける。
3月末の公表で何が問われるか
KDDIは3月末に、特別調査委員会の報告書と再発防止策を公表する予定だ。特別調査委員会とは、会社から独立した弁護士や公認会計士などで構成される組織で、事実関係、原因、再発防止策を外部の目で調べる仕組みだ。
動機や経営責任は当然焦点になる。そのうえで、統制がどこで止まっていたかという問いにも注目したい。複数年にわたり約2460億円の架空売上が積み上がるまで、なぜ監査や内部統制がそれを止められなかったのか。どの時点で本社やグループ全体がこの異常を知りえたのか。この問いへの答えが、今回の報告書の核心になるとみられる。
KDDIはauやpovo、光通信事業で知られる通信会社だ。だが今回の問題は、その通信事業ではなく、周辺に広がっていた広告・ポイント・媒体事業という複雑な領域で起きた。「2400億円の架空売上」という数字の派手さより、通信会社が広告代理という見えにくい事業を長年抱えたとき、統制がどこで破綻したかに問題の核心がある。3月末の報告書が、その問いにどこまで答えるかが注目される。
(本稿は各種公開情報をもとに作成しました。一部数値は記事掲載時点の情報です)

