2月貿易統計は573億円の黒字——対米輸出は3か月連続減、自動車と部品に関税の重荷、原油高が迫る次のリスク

数字だけ見れば、2月の日本の貿易統計は悪くない。輸出全体は前年同月比で増え、貿易収支(輸出から輸入を差し引いた額)は573億円の黒字を確保した。しかしその内側には、3か月続く対米輸出の落ち込みと、中東情勢に連動する原油高という二つのリスクが潜んでいる。


目次

まず全体像——輸出増・黒字確保だが、勢いは見た目ほど強くない

財務省が発表した2月の貿易統計によると、輸出総額は前年同月比4.2%増、輸入総額は同10.2%増だった。差し引きの貿易収支は573億円の黒字で、2か月ぶりに黒字に転換した。

ただし、「輸出が増えた」という事実は額面どおりには受け取りにくい面がある。貿易統計の数字は金額ベースであり、円安が続いていれば、同じ量のモノを輸出しても円換算の額は膨らむ。実際、数量ベースで見ると輸出は前年同月比でわずかに減っており、金額増の一部は為替・価格要因によるものとみられる。全体として輸出が崩れているわけではないが、見た目ほど力強くもない、というのが実態だ。


対米輸出は3か月連続のマイナス——自動車・部品・医薬品がそろって減少

全体が増えるなか、際立つのが対米輸出の弱さだ。

米国向けの輸出額は1兆7529億円と、前年同月比8.0%減。これで3か月連続の減少となった。品目別では、自動車が14.8%減、自動車部品が15.9%減、医薬品が58.1%減と、主力品目がそろって落ち込んでいる。

背景には、トランプ政権による関税措置の影響があるとみられる。関税とは輸入品にかける税金で、相手国の輸出企業にとっては実質的なコスト増になる。日本の自動車・部品メーカーが米国に輸出する際のコストが上がれば、需要や販売量が落ちやすくなる。このような状況が3か月続いているということは、単月の一時的な振れとは言いにくくなってきている。

米国は日本の輸出を支える重要市場であり、なかでも自動車産業が占める割合は大きい。ここが長期的に落ち込めば、自動車メーカーの収益だけでなく、関連部品メーカーや設備投資にも波及する可能性がある。


対中輸入は7か月連続の増加——規制強化の影響は今のところ見られず

輸入側で目立つのが、中国からの仕入れの増加だ。

中国からの輸入額は2兆3369億円と、前年同月比35.4%増。7か月連続で増加が続いている。中国は2026年1月に軍民両用品目の対日輸出規制強化を打ち出したが、2月統計の時点では大きな混乱は確認されていない。ただし、規制の対象や運用が広がれば、日本の製造業が依存する素材・部品の供給に影響が出る余地は残る。


次のリスク——原油高が輸入コストを押し上げる

2月時点では573億円の黒字を確保したが、先行きにはより大きな懸念がある。中東情勢、とりわけイランをめぐる緊迫化を受けた原油価格の上昇だ。

日本はエネルギー資源の大半を輸入に頼っており、原油価格が上がると輸入額が増えやすい。これは家計にとってはガソリン・電気代・物価の上昇として現れ、企業には物流・製造コストの増加として効いてくる。貿易収支の観点では、輸入額が膨らむほど黒字が削られ、赤字に転落するリスクが高まる。

財務省も「貿易収支への影響を注視していく」とコメントしており、今後の原油動向が統計に与える影響を警戒している。

今回の2月統計では「対米輸出の減少」が目立ちやすいが、3〜4月以降の貿易収支を左右するのは、むしろ原油高による輸入コストの膨張かもしれない。


まとめ——「黒字」の一語では語れない構造

2月の貿易収支は黒字だったが、その土台は必ずしも強くない。今後は対米輸出が底を打つかどうかと、原油高が輸入コストにどこまで跳ね返るかが焦点になる。


(本稿は各種公開情報をもとに作成しました。一部数値は記事掲載時点の情報です)

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この記事を書いた人

CFP®/1級ファイナンシャルプランニング技能士
公益社団法人 日本証券アナリスト協会認定
・プライマリー・プライベートバンカー
・資産形成コンサルタント
一般社団法人金融財政事情研究会認定
・NISA取引アドバイザー

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