柏崎刈羽6号機また延期 東電の再稼働工程に残る不安

「原子炉に異常はなく、安全上の問題もない」──。3月14日、東京電力はこう説明しながらも、柏崎刈羽原子力発電所6号機の発電と送電を停止させた。原因は、発電機からわずかな漏電の兆候を示す警報だ。

この警報が鳴ったのは、実は2日前の3月12日のこと。発電機関連の装置などを調べたが原因を特定できないまま、最終的に発電を停止して詳細調査に入った。影響は即座に出た。3月18日に予定していた営業運転の開始は、延期される見通しとなった。


目次

「再稼働」と「営業運転」は違う

このニュースを正しく読み解くには、まず2つの言葉の違いを押さえておく必要がある。

柏崎刈羽6号機は今年1月21日に「再稼働」した。しかし、再稼働はあくまで原子炉を起動させた段階だ。そこから発電量を少しずつ増やしながら、設備が安定して動くか、規制上の要件を満たしているかを段階的に確認していく。その最終確認を終えて初めて「営業運転」──つまり本格的な商業運転が始まる。

6号機は今まさにその最終確認の最中にあった。あと一歩というところで、再びトラブルが起きた。


「漏電の兆候」とはどういうことか

今回の警報は「微少地絡(びしょう・ちらく)」と呼ばれる現象だ。地絡とは、電気が本来流れるべき回路から外れ、地面側に漏れていく状態のこと。日常的に言えば「漏電の兆候」にあたる。

東電によると、今回検知したのはあくまで「兆候を早期につかむための警報」の段階で、原子炉本体や放射線に関わる異常ではないという。発電機周辺の電気系統のトラブルとして処理されている。

ただし、原因が不明のまま運転を続けるのは避けるべき種類の警報だ。東電は2日間調べたが不具合の解消に至らず、発電機を送電系統から切り離す判断をした。なお、切り離した後も原子炉は止めておらず、出力を約20%まで下げた状態で運転を継続している。「発電停止」と「原子炉停止」は別の話だ。


これが初めてのつまずきではない

今回のトラブルは、6号機にとって2度目の足踏みだ。

1月21日の再稼働直後にも、警報設定の不具合で17日間にわたって停止するトラブルがあった。その影響で、当初2月26日に予定していた営業運転の開始が、すでに3月18日に延期されていた。そこへ今回の漏電警報が重なった。初期トラブルの範囲とみる余地はある一方、短期間で停止や延期が重なったことで、安定運転への不安を招きやすい状況になっている。


なぜ柏崎刈羽の再稼働はこれほど注目されるのか

柏崎刈羽原発は世界最大級の発電容量を持つ原子力発電所だ。6号機の出力は約136万キロワットで、これ1基で相当規模の電力需要をまかなえる能力がある。

だが、注目の理由はそれだけではない。6号機の商業運転は、東京電力にとって2011年の福島第一原発事故後、初の原発での営業運転となるはずだった。長年の安全審査、セキュリティ問題、地元との調整を経て、ようやくたどり着いた場所だ。それが再び遅れた。

東電にとってこの原発の本格稼働は、収益の改善や火力発電に頼る燃料費の削減という意味でも重要だ。また、政府が推進する原発活用方針の象徴的な一歩でもあった。だからこそ、「軽微なトラブル」であっても、小さなニュースとして扱われない。


「安全」と「安定運転」は別の評価軸

東電は「安全上の問題はない」と繰り返す。これは事実として受け止めていい。放射線漏れや炉心の異常があったわけではない。

しかし、「安全性に問題がない」と「安定して運転できる」は、まったく別の評価軸だ。

発電機や周辺設備で不具合が続けば、営業運転には進めない。原因不明の警報が複数回重なれば、「初期段階のありがちなトラブル」なのか、「何か構造的な問題があるのか」という疑問が生まれる。現時点で東電は原因特定に至っておらず、スケジュールの見通しも「精査中」としか言えない状況だ。


私たちの電気代と、日本のエネルギー政策への影響

原発の話は「遠い世界の話」に見えるかもしれないが、エネルギーコストという点では家計とも無縁ではない。

原発は稼働中は燃料費が比較的低く抑えられる。火力発電の燃料(LNGや石炭)は価格が変動しやすく、円安が重なれば輸入コストも膨らむ。柏崎刈羽が安定して動けば、東電管内の電力コスト構造は変わりうる。

また、政府は脱炭素を進めるうえでも原発の活用を明確に位置づけている。その最前線にいる6号機が予定通り動けないことは、政策の進展の遅さを示す現実でもある。

今後、東電は原因を調べた上で改めて原子力規制委員会に営業運転開始の申請をやり直す必要がある。新たなスケジュールはまだ見えていない。


(本稿は各種公開情報をもとに作成しました。一部数値は記事掲載時点の情報です)

💡 豆知識:いま動いている日本の原発は何基?

2026年3月時点で、日本で営業運転中の原発は全国で10基です。
電力会社別に見ると、関西電力が5基と最多で、現在の営業運転中原発の中心となっています。

電力会社発電所・号機所在地炉型定格出力
関西電力美浜3号機福井県PWR826MW
関西電力大飯3号機福井県PWR1,180MW
関西電力高浜1号機福井県PWR826MW
関西電力高浜3号機福井県PWR870MW
関西電力高浜4号機福井県PWR870MW
中国電力島根2号機島根県BWR820MW
四国電力伊方3号機愛媛県PWR890MW
九州電力玄海3号機佐賀県PWR1,180MW
九州電力玄海4号機佐賀県PWR1,180MW
九州電力川内1号機鹿児島県PWR890MW

営業運転中10基の合計出力:9,532MW(約953万kW)

PWR(加圧水型軽水炉)BWR(沸騰水型軽水炉) は原子炉の方式の違いです。
現在の営業運転中10基のうち、島根2号機以外の9基はPWRです。

注目:柏崎刈羽6号機(東京電力ホールディングス・9501)の動向

新潟県の柏崎刈羽6号機(1,356MW)は、2026年2月16日に送電再開し、調整運転に入っていました。
ただ、3月12日に発電機の漏電を示す警報が作動し、東京電力は3月14日に発送電を停止
このため、3月18日に予定していた営業運転開始は延期となっています。

再稼働の全体像

区分基数
営業運転中10基
再稼働済み(送電再開済み)15基
うち定期検査などで停止中5基

再稼働済み15基という数字は、現在その瞬間に発電している基数ではなく、
新規制基準の下で送電再開まで到達した原発の数を示しています。
このため、再稼働済みでも定期検査などで停止している原発が含まれます。

ひと目で分かるポイント

  • 現在の営業運転中は10基
  • 関西電力が5基で最多
  • 営業運転中10基の総出力は9,532MW
  • 柏崎刈羽6号機は発送電停止中で、営業運転開始は延期
  • 「再稼働済み15基」と「営業運転中10基」は意味が異なる
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この記事を書いた人

CFP®/1級ファイナンシャルプランニング技能士
公益社団法人 日本証券アナリスト協会認定
・プライマリー・プライベートバンカー
・資産形成コンサルタント
一般社団法人金融財政事情研究会認定
・NISA取引アドバイザー

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