トランプ氏が北朝鮮との対話再開に関心 韓国首相が明かすも実現性はなお不透明

「キム・ジョンウン総書記は私との対話を望んでいるのか」──トランプ大統領がそう尋ねたという。

韓国のキム・ミンソク首相は2026年3月13日、ホワイトハウスでトランプ大統領と面会した。面会後の記者会見でキム首相が明らかにしたのは、トランプ氏が北朝鮮のキム・ジョンウン総書記との対話に「関心を示した」という事実だった。同時に韓国側は対話再開に向けたアイデアをトランプ氏に伝え、トランプ氏は補佐官に対応を検討するよう指示したという。

ただ、この「関心表明」が実際の対話再開につながるかどうかは、現時点では不透明だ。ホワイトハウスや北朝鮮側からの具体的な反応はまだ確認されておらず、対話の日程や条件について何も決まっていない段階だ。


目次

トランプ氏と北朝鮮外交──これまでの経緯

トランプ氏が北朝鮮に並々ならぬ関心を持つのは、第1期政権時代の実績があるからだ。2018年から2019年にかけて、トランプ氏はキム総書記と3回首脳会談を行った。これは米朝関係において異例のことで、通常は事務レベルの交渉を積み重ねてから首脳が会う「ボトムアップ外交」が一般的だが、トランプ氏はそれを飛ばして首脳同士が直接向き合う「トップダウン外交」で臨んだ。

しかし2019年2月のベトナム・ハノイでの会談は決裂した。北朝鮮が求めた制裁解除の範囲と、米国が求めた非核化の具体的措置について折り合いがつかなかったためだ。それ以降、実務レベルの協議も含めて米朝間の外交は事実上止まり、今日まで続いている。

そのトランプ氏が第2期政権に就いた2025年以降、再び北朝鮮外交への意欲を周囲に示す場面が続いている。2019年のハノイ会談決裂後、米朝の実務外交は長く停滞してきた。今回の韓国首相との面会は、その停滞をどこかで動かそうという探り合いの一端とみることができる。


北朝鮮側の姿勢はどうか

一方、北朝鮮のキム・ジョンウン総書記は先月(2026年2月)、「アメリカが北朝鮮への敵視政策を撤回すれば、関係改善の可能性がある」との考えを示したとされる。

「敵視政策」とは北朝鮮がたびたび使う言葉で、米韓合同軍事演習、経済制裁、戦略兵器の朝鮮半島への展開といった米国の対北朝鮮政策全般を指す。つまり北朝鮮が求めているのは、単に首脳が会うことではなく、安全保障環境そのものを変えることだ。

これに対し米国は、核・ミサイル開発の具体的な抑制や査察の受け入れを北朝鮮に求める立場を維持している。この「何を先に動かすか」をめぐるギャップが、米朝交渉が2019年以降進んでいない最大の理由だ。現時点でこのギャップが埋まる見通しはない。


「対話ムード」と「ミサイル発射」が同じ日に起きた

今回の報道で見落としてはならないのは、タイミングの矛盾だ。

韓国首相がトランプ氏との面会で「対話再開のアイデア」を伝えたのが3月13日。その翌14日には、北朝鮮がおよそ10発の弾道ミサイルを発射したと韓国軍が発表した。現在、米韓は合同軍事演習「フリーダム・シールド26」(3月9日〜19日)を実施中であり、北朝鮮はこれに対抗して発射に踏み切ったとみられる。

外交の語り口では「対話への関心」が出ているにもかかわらず、軍事的な示威行動は止まらない。北朝鮮は言葉と行動を使い分けており、交渉テーブルに着く前から圧力をかけ続けるのが従来のパターンだ。APはこの点を重視し、外交ムード一辺倒な報道の見方を牽制するような論調をとっている。


韓国が「橋渡し役」を狙う理由

今回の面会で、韓国が主体的にトランプ氏へ対話再開のアイデアを持ちかけた点は見ておく価値がある。

韓国は北朝鮮と直接向き合う当事者であり、米韓同盟の一員でもある。米朝が緊張緩和に動くとき、韓国が仲介役を担うことが多い。文在寅政権時代(2017〜2022年)には韓国が積極的に米朝接触の糸口をつくったことがあった。

ただし現在、韓国側にはもう一つの懸案がある。米韓関係そのものの摩擦だ。通商問題や在韓米軍の一部装備が中東へ転用されるのではとの懸念が出ており、韓国にとってトランプ政権との関係維持は安全保障上の急務でもある。今回の訪米は、北朝鮮問題だけでなくそうした文脈も含んでいた可能性がある。


月末の中国訪問が鍵になるか

トランプ氏は3月末から4月初めにかけて中国を訪問する方向と報じられている。北朝鮮に最も影響力を持つとされる中国との首脳会談は、米朝対話の行方に直接影響しうる。

北朝鮮はロシアとの軍事協力を深める一方、中国とも経済的・外交的に依存関係がある。トランプ氏が中国側に北朝鮮への働きかけを求めるのか、それとも直接キム総書記にアプローチするのか。この動向が、今後の展開を読む大きな手がかりになりそうだ。


現時点での整理は、「トランプ氏が北朝鮮との対話に関心を持っている」という事実はあるが、それが実際の対話再開につながるかどうかは全くの未定だ、ということに尽きる。「関心表明」と「対話の再開」の間には、条件交渉・北朝鮮側の応答・実務協議の整備など、越えなければならないハードルがいくつもある。過去のトランプ外交を知る人ほど、期待と慎重さの両方を持って見ているはずだ。

(本稿は各種公開情報をもとに作成しました。一部数値は記事掲載時点の情報です)

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この記事を書いた人

CFP®/1級ファイナンシャルプランニング技能士
公益社団法人 日本証券アナリスト協会認定
・プライマリー・プライベートバンカー
・資産形成コンサルタント
一般社団法人金融財政事情研究会認定
・NISA取引アドバイザー

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