💴 【春闘2026】給料が上がったのに、なぜ苦しいまま?

目次

春闘2026が照らす、日本の賃上げの”リアル”

📌 この記事でわかること

  • 春闘のベアと定昇、2つの「賃上げ」の違い
  • 給料が上がっても生活が楽にならない「実質賃金」の正体
  • 中小企業が賃上げできない構造的な理由
  • 注目の「第3の賃上げ」=福利厚生とは何か
  • トータル・リワード戦略という新しい報酬の考え方

🌸 春は来た。でも、財布は軽いまま——

3月になると、日本中の会社員が少しだけ耳をそばだてる季節がある。

「今年の春闘、どうなった?」

**春闘(しゅんとう)**とは、毎年春に行われる労働組合と企業の賃金交渉のこと。とくに大手企業の妥結額は、中小企業や関連企業の「相場感」にも影響するため、日本全体の賃金水準を動かす一大イベントだ。

2026年の春闘は、例年以上に熱を帯びている。日立製作所の労働組合は**月1万8,000円のベースアップ(ベア)**を要求。前年より1,000円上回り、要求水準としては高い部類に入る。電機連合も産別として足並みを揃え、賃金の底上げを強く求める姿勢を示している。


🔍 そもそも「賃上げ」には2種類ある

給料が上がる仕組みには、大きく分けて2種類ある。

種類内容特徴
📈 定期昇給(定昇)勤続や評価に応じた毎年の昇給制度として”通常運転”
🔺 ベースアップ(ベア)賃金表そのものを底上げ固定費化しやすく下げにくい

ベアは企業にとって固定費の恒久的な引き上げを意味する。それでも強気の要求が続く背景には、ここ数年続く「物価高」への強い危機感がある。


📉 名目の数字は上がった。でも「実感」がない理由

給料が上がっているのに、なぜ生活が楽にならないのか——。

多くの人が感じるこの違和感を説明するのが、**「実質賃金」**という概念だ。

たとえば——
  給料が +3% 上昇
  物価が +4% 上昇
  ────────────────────
  実質的な購買力は「マイナス」

名目賃金(給料の額面)は確かに上がっている。しかし物価の上昇がそれを上回り続けているため、生活の購買力はむしろ目減りしてきた。

「春闘で賃上げ!」というニュースが明るく報じられる一方で、スーパーのレジで「今月も高いな」と感じる感覚——この二つが同時に存在するのは、数字のマジックではなく、実質賃金の構造的な問題だ。


🏭 大手だけが「賃上げ」できる時代?

では、日本企業の大多数を占める中小企業の現場はどうなっているのか。

💡 商工中金 調査データ(2025年11月) 2026年に賃上げを予定する中小企業:72.4%

7割以上が「上げたい」と答えているのだから、決してやる気がないわけではない。

問題は「原資(げんし)」だ。賃上げに充てる資金のことを原資と呼ぶが、中小企業にとってこれが最大の壁になっている。

原材料・エネルギー費 ↑
        ↓
価格転嫁できない(取引先との力関係)
        ↓
企業利益が圧迫される
        ↓
賃上げ原資が残らない ← ここが壁

同じ調査でも、「上げたい企業」と「上げられない企業」が並存しているのが実態に近い。賃上げが”面”として広がるには、この構造的な壁を崩す必要がある。


🆕 そこに現れた「第3の賃上げ」という発想

給料(定昇・ベア)が思うように上げられないなら、別のルートで従業員の実質的な手取りを増やせないか——。

こうした発想から生まれたのが、**「#第3の賃上げアクション」**という動きだ。freeeやエデンレッド(食事補助サービス)、リゾートワークスなど複数の企業が連携し、福利厚生の拡充を通じて実質的な生活水準を押し上げようというプロジェクトとして展開されている。

💡 「3つの賃上げ」を整理する

第1の賃上げ ▶ 定期昇給(毎年の通常運転)
第2の賃上げ ▶ ベースアップ(賃金の底上げ)
第3の賃上げ ▶ 福利厚生の拡充(食事・住居・旅行・健康など)
                        ↑
               ここが今、注目されている

たとえば毎月の食事補助があれば、外食費が月数千円浮く。旅行費用が大幅に安くなれば、年に1度の家族旅行のコストが下がる。現金給与としては増えないが、生活の実質負担が軽くなるという意味では、「手取りが増えた」のと近い効果がある。


🏢 企業側のメリットと、税務上の注意点

福利厚生には、企業側にとっても設計の自由度が高いという特徴がある。

項目給与(ベア)福利厚生
⬆️ 上げやすさ難しい(固定費化)比較的容易
⬇️ 下げやすさ難しい制度次第で調整可
💰 税務メリットなし要件次第で損金算入可
😊 従業員の体感直接的生活の質として実感

⚠️ 税務上の注意点 「全従業員が対象」「現金支給ではない」などの要件を外れると、従業員の給与課税扱いになる可能性がある。制度設計と運用ルールの確認は欠かせない。


🏨 事例:リゾートワークスが示す「旅行福利厚生」の広がり

第3の賃上げの具体的なサービスとして注目されているのが、旅行特化型の福利厚生「リゾートワークス」だ。

📊 リゾートワークス 概要

  • 🏨 連携施設:全国350カ所以上
  • 🏢 導入企業:1,000社規模
  • 💴 仕組み:ホテル側から一定数の客室枠を事前確保 → 大幅割引で提供

「旅行が安くなるだけ?」と思うかもしれないが、企業側の活用範囲はそれにとどまらない。

  • ✈️ 出張時の宿泊費圧縮
  • 👥 リモートワーカーの集合コスト削減
  • 🎁 採用・定着のアピールポイント

「旅行」という切り口が、意外なほど広い範囲の経費構造に接続しているのだ。


🎯 「給料」だけが報酬じゃない——トータル・リワード戦略

ここまで読んで、「でも結局、給料を上げるのが一番では?」と感じた人もいるだろう。その感覚は正しい。第3の賃上げは「給料の代わり」ではなく、「給料に加えて」実施されてこそ意味がある。

ただ、人手不足が深刻化し、働き方の価値観も多様化する現代において、「給料の額面」だけを競っても限界がある、という認識も広がっている。

そこで注目されるのが**「トータル・リワード戦略(Total Reward Strategy)」**という考え方だ。

🗂️ トータル・リワードの5つの要素


⚖️ 救世主か、それとも「賃上げ逃げ」か

一方で、忘れてはならない視点もある。

第3の賃上げには、批判的な見方もある。「給料を上げるべきところを、福利厚生で誤魔化しているだけでは?」という声だ。

🔴 福利厚生では補えないもの

  • 🏠 家賃・住居費の支払い
  • 🎓 子どもの教育費
  • 👴 老後の資産形成

これらは現金収入でなければ対応できない。

「第3の賃上げ」が本当に価値を持つのは、あくまで第1・第2の賃上げと組み合わせてこそだ。賃上げの原資を継続的に確保するには、AIなどのテクノロジーを活用して生産性を高め、稼ぐ力そのものを底上げしていくことが根本的な解となる。

春闘の季節に飛び交う数字の裏側には、日本の賃金構造の複雑な現実がある。「上がった」「まだ足りない」「感じない」——その全てが、同時に正しい。


📝 まとめ:春闘2026を読む3つの視点

👁️ 視点① 実質賃金で見る

名目の賃上げ率だけでなく、物価変動を差し引いた購買力の変化まで見なければ、生活の実態は見えてこない。春闘の数字が上がっても「感じない」のは、この構造によるところが大きい。

🏭 視点② 中小企業の”壁”を理解する

賃上げへの意欲は多くの企業が持っているが、問題は原資。価格転嫁の難しさと利益圧迫という構造的な壁がある限り、「上げたくても上げられない」企業は一定数残り続ける。

🎁 視点③ 第3の賃上げは”補完”として捉える

福利厚生の充実は実質的な手取り感を押し上げ得るが、あくまで賃上げの補完であり代替ではない。トータル・リワード戦略の一部として、給与と組み合わせて設計されてこそ意味を持つ。


💬 編集後記 給料の話は、「上がったかどうか」だけでは語れない時代になっている。数字の向こう側にある構造を知ることが、自分の働き方と会社選びを考えるうえでの手がかりになる。


📰 FPTRENDY.com | 2026年 春闘特集

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この記事を書いた人

CFP®/1級ファイナンシャルプランニング技能士
公益社団法人 日本証券アナリスト協会認定
・プライマリー・プライベートバンカー
・資産形成コンサルタント
一般社団法人金融財政事情研究会認定
・NISA取引アドバイザー

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