特集:「令和6年度 食料・農業・農村白書」から読み解く鶏卵価格の動向と今後の見通し

本日、農林水産省より「令和6年度 食料・農業・農村白書」が閣議決定・公表されました。この白書では、新たに策定された食料・農業・農村基本計画の内容や、合理的な価格形成を目指した取り組み、さらにはスマート農業技術の活用と今後の展望といった重要テーマが特集されています。今回はこの中でも、日々の生活に直結する「鶏卵の価格」に注目し、その動向と背景について詳しく見ていきたいと思います。

鶏卵価格が上昇中:鳥インフルエンザと夏の高温が供給に影響

近年、私たちの食卓に欠かせない鶏卵の価格は、徐々に上昇してきており、その結果として消費者の負担が増している状況が続いています。特に令和7年(2025年)にかけての動きを見ると、鶏卵の価格上昇が顕著になってきています。これは単に市場の需給バランスの変化だけでなく、鶏卵の供給を左右する重要な要因が複数重なっていることによるものです。

まず大きな影響を与えているのが、夏季の高温です。暑い季節になると、鶏の体調や産卵行動に影響が出るため、産卵数が減少する傾向があります。これは自然な生理現象であり、鶏自身の健康管理や飼育環境の整備に努力が払われていますが、高温が続くとどうしても産卵が減り、結果的に市場に出回る鶏卵の量が減少します。これが価格上昇の一因となっています。

さらに、令和7年の年初から特に注目されたのが、高病原性鳥インフルエンザの発生拡大です。鳥インフルエンザは養鶏場に甚大な被害を及ぼす感染症で、感染が確認された地域では多くの鶏が淘汰される必要があります。このため、生産規模の縮小や鶏の数の減少が避けられず、鶏卵の供給全体が減少しています。こうした生産現場の困難な状況が、市場の供給不足を引き起こし、鶏卵価格の押し上げにつながっているのです。

これら二つの要因、すなわち夏季の高温による自然的な産卵減少と、鳥インフルエンザによる生産現場の影響が重なり合うことで、鶏卵の供給は厳しい状況が続いています。このため、今後も鶏卵の価格は高止まりする可能性が高く、消費者や業界にとって大きな関心事となっています。関係機関も安定供給に向けた対策を強化しつつあり、状況の注視が必要です。


生産量の減少が価格高騰に拍車

令和5年度(2023年度)における鶏卵の生産量は、前年と比べて約3.1%の減少となりました。この減少は決して偶然の数字ではなく、深刻な背景が存在しています。主な原因として、高病原性鳥インフルエンザの大規模な発生が挙げられます。この感染症は養鶏業にとって大きな脅威であり、発生地域の多くの養鶏場で鶏の淘汰や処分が実施されました。

これにより、多くの生産者は鶏の数を減らさざるを得ず、生産体制の縮小が続いています。鶏の数が減れば、その分だけ卵の生産量も減少し、市場に供給される鶏卵の総量が減ることになります。市場の供給不足は需要とのバランスを崩し、価格を押し上げる要因となります。

このような生産量の減少は、単に一時的なものではなく、感染症対策の継続や生産回復までの期間が必要なため、長期的に市場の供給に影響を与えることが懸念されています。結果として、鶏卵の価格高騰に拍車がかかり、消費者の負担増加へとつながっているのです。今後も生産量の回復と安定供給が重要な課題となります。


価格上昇の背景には複数の要因

鶏卵価格の上昇は、単に供給量が減少しただけでは説明しきれない複数の要因が絡み合って進んでいます。まず、鶏卵の供給減少は先述の鳥インフルエンザの大規模発生による鶏の淘汰や生産体制の縮小が大きな原因ですが、これに加えて流通コストの上昇も価格を押し上げる重要な要素となっています。

燃料費や物流費の高騰により、鶏卵を生産地から消費地まで運ぶコストが増加し、これが販売価格に反映されているのです。さらに、鶏卵に対する需要は依然として堅調であり、日々の食生活に欠かせない食材であることから、価格の上昇に対して消費者の需要が大きく減退していません。こうした需要の安定が市場価格の高止まりを支えています。

また、高病原性鳥インフルエンザは生産現場のみならず、消費市場全体の供給量を減少させる影響を及ぼしており、その結果、スーパーや小売店で販売される鶏卵のパック単位の価格は前年と比較して依然として高い水準で推移しています。消費者が日常的に購入する身近な商品であるだけに、この価格上昇は家計にも大きな影響を及ぼしている状況です。

このように、供給減少、物流コスト増加、需要の堅調さが複合的に作用し、鶏卵の価格上昇が続いていると言えます。今後の市場動向や対策に注目が必要です。


今後の展望と消費者への影響

鶏卵の価格は、現在の供給減少の状況を踏まえると、短期間での急激な回復は難しいと考えられています。養鶏場での鶏の淘汰や生産体制の再構築には時間を要するため、当面は鶏卵の供給が十分に戻らず、高値圏での価格推移が続く可能性が高いです。このため、消費者にとっては家計の負担増加が続くことが予想され、日常的に利用する鶏卵の価格上昇が生活費に影響を及ぼすことが懸念されています。

また、鶏卵は多くの料理や食品加工品の原料として幅広く使われているため、鶏卵価格の上昇は関連する加工食品や外食産業の価格にも波及する恐れがあります。これにより、食にかかる総合的なコスト増加を招き、消費者の購買行動や食生活に影響が出る可能性もあります。

一方で、農林水産省をはじめ関係機関は、供給の安定化に向けた様々な対策を進めています。感染症対策の強化や生産回復支援に加え、消費者に対しても適切な情報提供を行い、価格動向や供給状況について理解を深めてもらう努力が続けられています。今後も市場の動きを注視しつつ、安定的な鶏卵供給の実現に向けた取り組みが期待されています。


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この記事を書いた人

CFP®/1級ファイナンシャルプランニング技能士
公益社団法人 日本証券アナリスト協会認定
・プライマリー・プライベートバンカー
・資産形成コンサルタント
一般社団法人金融財政事情研究会認定
・NISA取引アドバイザー

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