年金改革法案が衆院通過、基礎年金底上げ明記で参院審議へ【2025年最新】

年金改革関連法案が衆院本会議で可決、参院へ

2025年5月30日、年金制度の改革を目的とした関連法案が衆議院本会議で賛成多数により可決されました。これにより、法案は次の段階となる参議院に送られ、今国会中の成立が見込まれています。

この法案の最大の特徴は、将来的に年金給付の基盤となる「基礎年金」の給付水準を守るための措置が付則に明記された点です。具体的には、「基礎年金の底上げ措置」が盛り込まれ、将来の年金財政の検証結果に応じて給付水準の低下を抑制し、必要に応じて厚生年金の積立金を活用して基礎年金の支給額を引き上げる仕組みが設けられました。

この修正により、将来の年金制度の安定性を高め、受給者が安心して老後の生活設計を行えるようにすることが狙いです。基礎年金はすべての国民に共通して支給される年金であり、その底上げは広く社会保障の充実につながるため、多くの注目を集めています。

法案の成立は今後の参議院での審議を経て最終決定されますが、今回の衆院通過は重要な一歩となりました。引き続き、詳細な審議と国民の理解を得ることが求められています。


基礎年金の底上げと厚生年金の積立金活用

今回の年金改革関連法案では、将来の年金給付を安定させるための具体的な仕組みが盛り込まれています。法案の付則には、公的年金制度の財政状況を4年ごとに検証し、その結果、基礎年金の給付水準が将来的に低下する可能性がある場合に対応するルールが明記されました。

具体的には、厚生年金の積立金を活用して基礎年金の給付水準を引き上げる措置を取ることが想定されています。これにより、経済環境や人口構成の変化などで基礎年金の支給額が下がるリスクを抑え、受給者の生活の安定を図ります。

ただし、この措置を実施するときには、厚生年金の給付水準が一時的に低下する可能性があります。そこで、その影響を和らげるための対応策も同時に盛り込まれており、受給者が急激な給付減少に直面しないよう配慮がなされています。

このように、基礎年金の底上げと厚生年金の積立金活用は、公的年金の持続可能性を維持しつつ、給付の安定化を目指す重要な仕組みとなっています。将来の不確実性に対応しながら、国民の老後生活を支えるための制度設計として注目されています。


パート労働者の厚生年金加入要件の見直し

今回の年金改革法案では、パート労働者など非正規雇用者がより厚生年金に加入しやすくなるよう、加入要件の見直しが盛り込まれています。

これまで厚生年金に加入できるかどうかは、主に「年収106万円の壁」と呼ばれる賃金基準や、勤務先の従業員数が51人以上であることが条件とされてきました。具体的には、年収が106万円未満の人や、規模の小さい企業に勤める人は厚生年金の対象外となるケースが多かったため、加入が難しい状況が続いていました。

法案では、この賃金要件と企業規模の要件を撤廃し、パートなどの短時間労働者でも厚生年金に加入しやすい環境を整備します。これにより、働く人の老後の年金保障が強化され、所得格差の是正や生活の安定につながることが期待されています。

この見直しは、非正規労働者の増加が進む現代の労働環境に対応した重要な改革であり、多くの働く人にとって年金制度の恩恵を受けやすくなる大きな一歩といえます。


65歳以上の在職老齢年金の受給調整改正

現在の年金制度では、65歳以上の高齢者が働きながら年金を受給する場合、給与と年金の合計が月50万円を超えると、厚生年金の支給額が減額される仕組みとなっています。つまり、働く収入が一定の基準を超えると、年金の一部がカットされる仕組みです。

今回の改正では、この基準が見直され、月62万円までなら給与と年金の合計が超えても、厚生年金を満額で受け取れるようになります。これにより、高齢者がより長く、また安心して働き続けやすい環境が整えられることになります。

この変更は、高齢化が進む中で高齢者の就労機会を支援し、働きながらの生活資金の安定を図るための重要な制度改善です。年金減額の壁が引き上げられることで、収入の増加を目指す高齢者の意欲も高まることが期待されています。


各党の意見と反応

年金改革関連法案に対する各党の立場は明確に分かれています。自民党、公明党、そして立憲民主党は法案に賛成し、特に基礎年金の底上げ措置を重要なポイントとして評価しました。彼らは年金給付の安定化と社会保障の充実を図るため、この法案の成立が必要だと主張しています。

一方で、日本維新の会、国民民主党、共産党、れいわ新選組といった野党勢力は法案に反対の姿勢を示しました。彼らは、財源の具体的な確保が不透明であることや、法案の審議時間が不十分で十分な議論が尽くされていない点を強く批判しています。さらに、年金制度の根本的な見直しや抜本的な改革が不可欠であると訴え、今回の法案では問題の根本解決には至らないと主張しました。

特に、立憲民主党が修正案に賛同したことで、他の野党からは「強行採決を後押しした」との批判も上がっています。これにより、野党間での対立が一層鮮明となり、今後の国会審議でも激しい論戦が予想されます。


専門家の評価と今後の課題

慶應義塾大学の駒村康平教授は、今回の基礎年金底上げ措置について、特に「就職氷河期世代」の低年金問題を抑え、将来的な社会不安の拡大を防ぐ観点から高く評価しています。就職氷河期世代は長期間にわたり厳しい経済状況に置かれてきたため、年金受給額が低くなるリスクがあり、その対策は社会全体の安定につながると指摘しています。

しかし教授は一方で、今回の措置は給付水準を大幅に引き上げるものではなく、悪化を抑える維持策に近いものであることから、今後その効果がどの程度現れるかについて慎重な検証が必要だと述べています。

また、年金制度だけに頼るのではなく、賃金の引き上げや良好な労働条件の確保、さらには60歳以上の高齢者が働き続けやすい環境づくりやリスキリング(技能の再習得)支援など、多面的な政策を組み合わせることが重要であると強調しています。

財源面については、基礎年金の底上げによって将来的に年間で1兆円から2兆円程度の国庫負担増が見込まれるものの、何も手を打たなければ貧困層の拡大や生活保護費の増加によって、かえって国庫負担が膨らむ可能性もあるため、国民的な合意形成を図りつつ、慎重かつ計画的に制度を進めていく必要があると指摘しています。

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この記事を書いた人

CFP®/1級ファイナンシャルプランニング技能士
公益社団法人 日本証券アナリスト協会認定
・プライマリー・プライベートバンカー
・資産形成コンサルタント
一般社団法人金融財政事情研究会認定
・NISA取引アドバイザー

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