2025年備蓄米売り渡しスタート!中小小売業者向け申請開始と精米課題、ドンキが指摘する複雑な流通構造の問題点を徹底解説

備蓄米売り渡しの申請受付が開始 中小小売業者向けの新制度

2025年5月30日から、農林水産省による随意契約による備蓄米の売り渡し申請の受付が始まりました。対象は年間1000トン以上1万トン未満の取扱量を持つ中小の小売業者や、精米設備を有するコメ販売店です。売り渡されるのは「古古古米」と呼ばれる令和3年産の約8万トンで、中小小売業者向けに6万トン、精米設備がある販売店向けに2万トンを割り当てています。

価格は60キロあたり消費税込みで1万886円(5キロ換算で約907円)で、店頭価格は流通経費を加えた上で、5キロ税抜き1800円程度になる見込みです。申請が予定量を上回った場合は、農林水産省が調整して契約量を決定します。

29日に実施された事業者向け説明会には1000を超える参加があり、関心の高さがうかがえます。


精米作業が販売のカギに 卸売業者の協力が求められる

備蓄米は国の保管倉庫で玄米の状態で保管されているため、消費者に届ける際は精米作業が必要です。通常の流通では卸売業者がこの精米作業を担いますが、今回の随意契約では保管倉庫から小売業者へ直接引き渡されるため、小売業者自身が精米設備を持たないケースが多く、どこで精米を行うかが大きな課題となっています。

大手企業では、例えばアイリスオーヤマは宮城県内の自社工場で精米を行い、楽天グループは複数の卸売業者に精米を委託して負担を分散させています。イオンも普段から取引のある卸売会社に精米を委託し、早期の店頭販売を目指しています。

一方、精米工場の運営団体によると、精米工場は通常の小売業者の依頼に応じて稼働しており、随意契約での備蓄米精米にどこまで対応できるか懸念があるとのことです。酒造組合の一部からは「空いている精米工場がある」という申し出もあり、農林水産省は精米が可能な工場と契約者のマッチングを進める方針です。

また、精米の手間を省くため玄米のまま販売する動きもあり、消費者向けにスマホアプリでコイン精米機の場所を検索できるサービスも登場しています。


アイリスオーヤマ、精米作業開始で店頭販売へ

宮城県亘理町のアイリスオーヤマグループの精米工場では、令和4年産備蓄米の第一便が5月29日に到着し、精米および袋詰め作業が始まりました。6月2日から宮城県、神奈川県、千葉県の店舗で販売を開始する予定です。価格は5キロ入り税込2160円で、オンライン販売の予約も受け付けています。

同社の担当者は「少しでも早く消費者の手に届くようスピーディーに作業を進めている」と述べています。


ドン・キホーテが指摘するコメ流通の問題点

ディスカウント店「ドン・キホーテ」を運営するPPIHは、小泉農林水産大臣宛にコメ流通の課題を指摘する意見書を提出しました。そこでは、JAグループとの取引における参入障壁の高さや、多段階の卸売構造による中間コストの増加が価格高騰や供給不足を招いていると問題視しています。

同社は、最大で5次問屋まで存在する複雑な卸構造が市場競争を阻害し、卸価格や販売価格の上昇の要因になっていると訴えました。小売業者が直接JAと交渉し、透明性を高める仕組みづくりが必要との提案もしています。

PPIHは随意契約で約1万5000トンの備蓄米を仕入れ、都内の一部店舗で5キロ約2000円程度で販売開始予定です。

担当者は取引した卸が5次問屋だったケースもあると明かし、「供給責任のない業者が増えている」ことが価格高騰の背景にあると分析しています。また、製品が既に袋詰めの状態で流通しているため、価格や品質の情報が不透明である点の改善も求めています。


以上が現在公表されている備蓄米の売り渡し状況と流通に関する問題点の概要です。今後の流通効率化や価格安定化に向けて、精米設備の活用や卸売構造の見直しなどが重要な課題となっています。

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この記事を書いた人

CFP®/1級ファイナンシャルプランニング技能士
公益社団法人 日本証券アナリスト協会認定
・プライマリー・プライベートバンカー
・資産形成コンサルタント
一般社団法人金融財政事情研究会認定
・NISA取引アドバイザー

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