NTTドコモは、ネット銀行大手の住信SBIネット銀行の株式の過半数取得を目指し、最終調整を進めています。これが実現すれば、ドコモは子会社化により銀行業に正式に参入することになります。
背景と狙い
携帯大手各社はすでにグループ傘下に銀行や証券会社を抱え、通信サービスの顧客基盤を活かした金融サービス展開を進めていますが、ドコモだけが自前の銀行を持っていませんでした。これによりドコモは金融分野で出遅れていると指摘されていました。
このためドコモは、これまで証券会社やカードローン会社を子会社化し金融サービスの強化を進めてきましたが、金融サービスの要である銀行を持つことで、自社の経済圏拡大や若年層の顧客獲得を目指しています。
買収の具体的内容
- ドコモは住信SBIネット銀行の約3分の2の株式取得を目標にTOB(株式公開買い付け)を実施予定
- SBIホールディングスが保有する約34%の株式はすべてドコモに譲渡される見込み
- 三井住友信託銀行が持つ約34%の株式は保持し、今後も株主として協業戦略を模索
- 買収成立後、住信SBIネット銀行は非公開化される見通し
- 住信SBIネット銀行は2023年3月に東証スタンダード市場に上場したが、約2年で非公開化されることになる
市場・競合環境
通信大手4社(NTTドコモ、KDDI、ソフトバンク、楽天)は携帯電話の顧客基盤を活用して、銀行や証券、カード会社をグループ内に持ち、スマホ決済やポイントサービスなどを連携させた経済圏の構築を進めています。ドコモの買収はこの競争をさらに激化させることが予想されます。
- KDDIは三菱UFJと共同出資した銀行と証券をそれぞれ完全子会社化
- ソフトバンクはグループ内に銀行、証券、クレジットカード会社を抱え、三井住友FGと提携強化
- 楽天も傘下に銀行、証券、カード会社を持ち、みずほFGと協業
ドコモは今回の買収で、通信大手唯一銀行を持たない弱点を解消し、金融分野の競争力を高める狙いがあります。
ドコモの経営状況と今後の展望
- ドコモの主力収入である個人向け通信サービスが減少傾向にあり、非通信分野の収益強化が急務
- 金融サービスやポイント決済を含む「スマートライフ」戦略を推進中
- 住信SBIネット銀行の預金残高は9兆円超と大規模であり、顧客基盤を生かした連携効果に期待
- 今後は三井住友信託銀行との協業体制を構築し、シナジー創出を目指す
【解説】
今回のNTTドコモによる住信SBIネット銀行買収は、通信事業の成長鈍化を背景に、金融サービスを強化し経済圏の拡大を図る戦略的な一手です。
ドコモはこれまで銀行を持たずに金融サービスを展開してきましたが、特に若年層の顧客獲得で他社に遅れをとっていました。住信SBIネット銀行の顧客基盤を取り込むことで、ドコモのスマホ決済やポイントサービスと連動させ、より強固な顧客囲い込みを実現しようとしています。
また、通信と金融の融合が進む現代において、携帯キャリアが持つ通信顧客の情報や接点は巨大な資産です。ドコモはこれを活用し、新たな収益源として銀行業務を取り込むことで、既存の通信収入の減少を補い、グループ全体の競争力を向上させる狙いがあります。
今後、住信SBIネット銀行は非公開化され、三井住友信託銀行とドコモの両社の協力で運営される体制となる見込みです。両者の強みを組み合わせることで、より多様な金融サービス展開が期待されます。
通信業界の金融分野における競争は一層激化しており、今回の買収はその勢力図に大きな影響を与えるでしょう。ドコモの銀行業参入は、今後の金融テクノロジー(FinTech)やキャッシュレス決済の進展においても注目されます。
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【外部関連リンク】
- 日本銀行(BOJ)公式サイト ─ 国内金利や政策決定の確認に。
- 米連邦準備制度理事会(FRB)公式サイト ─ FOMCや声明内容はこちら。
- Bloomberg(ブルームバーグ日本版) ─ 世界の金融・経済ニュースを網羅。
- Reuters(ロイター日本語版) ─ 最新のマーケット速報と経済記事。
- TradingView ─ 株価・為替・指数チャートの可視化に便利。