レギュラーガソリンの全国平均価格が3月16日時点で190.8円/Lとなり、44都道府県で過去最高を更新した。石油情報センターによると、前の週から一気に29円値上がりし、現行方式で調査を始めた1990年8月以降で最高になった。イラン情勢を背景にした原油価格の急騰が、日本の給油スタンドに直撃した形だ。
なぜここまで一気に上がったのか
今回の急騰の直接の引き金は、中東の地政学リスクだ。イランやその周辺国にあるエネルギー関連施設への攻撃が相次ぎ、ホルムズ海峡(ペルシャ湾とオマーン湾をつなぐ幅約50キロの海峡)を経由する原油・燃料の輸送に不安が生じた。この海峡は世界の原油供給の重要ルートで、そこへの懸念が国際的な原油価格を押し上げ、日本のガソリン価格に直撃した。
原油の国際価格は乱高下しているものの、ロイター通信によれば北海ブレント原油は3月19日に一時119ドル台まで上昇し、終値は108.65ドルだった。専門家の間では紛争が長引いた場合の「さらなる上振れリスク」も意識されている。加えて今回のデータは5週連続の値上がりを反映したもので、単発の一時高騰ではなく、継続的な上昇圧力がかかっていることを示している。
「高い県」と「急騰した県」は別々に見ると分かる
今回の価格データには、2つの切り口がある。「もともと高い地域」と「今週の上昇が特に激しかった地域」だ。
価格水準が高いのは、山形(198.5円)、長野(197.8円)、鳥取(197.7円)、沖縄(196.3円)、島根(195.8円)の順だ。地方部では一般に輸送コストや競争環境の違いが価格に影響しやすいとされる。
一方、今週の上昇幅が特に大きかったのは、岡山(+32.1円)、徳島(+31.6円)、愛媛(+31.3円)、愛知(+31.1円)、大阪(+30.8円)など、西日本の都市部・工業地帯に集中している。水準上位と上昇幅上位が必ずしも一致しない点は、今回のデータの重要な読み取りポイントだ。
なお、最も価格が低い埼玉(185.2円)、高知(185.4円)、宮城(185.6円)も、それでも185円台という高水準にある。「安い」というより、「少しマシ」という程度の差に過ぎない。
また、2月28日のアメリカなどによる軍事作戦開始前との比較では、最も値上がりが大きいのは和歌山(+38.8円)、岡山(+37.2円)、徳島(+37.0円)で、3週間足らずで40円近く上がった地域もある。
ガソリンだけではない——軽油も灯油も同時高騰
今回の燃料高騰は、ガソリンに限らない。石油情報センターの公表データによると、軽油の全国平均は178.4円/L(前週比+28.6円)、灯油は154.1円/Lで18リットル換算2,774円(前週比+507円)と、いずれも大幅に上昇した。
軽油はトラックや農機械の燃料として広く使われており、物流コストに直結する。軽油高が続けば、食品や日用品の配送コストを通じて物価に波及する可能性がある。灯油については、寒冷地の家庭暖房費を直撃しており、まだ気温が低い東北・北海道などでは家計への打撃が大きい。
政府の補助金でどこまで下がるか
この急騰に対し、政府は燃料油価格激変緩和措置(価格が急騰した際に元売り会社への補助金で小売価格を抑える仕組み)を実施している。政府は3月19日以降、ガソリンで30.2円/Lの定額引下げ措置を実施しており、石油情報センターの担当者は「今後1、2週間かけて全国平均では170円程度に近づいていくことになると見られる」と説明した。
190.8円から170円程度まで戻るとすれば、約20円前後の押し下げ効果がある計算だ。ただし同担当者は、「高く仕入れた在庫を多く抱えているスタンドもあるので、地域によっては価格が落ち着くのに、より時間がかかる可能性もある」とも述べており、店頭での値下がりは一斉ではなく、地域・店舗ごとにズレが生じる見通しだ。
なお次回の調査結果は3月23日に調査が行われ、3月25日午後2時に公表予定となっている。
補助金で抑えても、原油相場の不安定さは残る
今回の激変緩和措置は、急騰した価格を短期的に170円台に引き戻す効果はあると見られる。ただし、これは国内価格を抑える制度であり、国際的な原油価格そのものを下げる力はない。
中東情勢が長引けば、原油価格の高止まりが続き、補助金の財政負担も膨らむ可能性がある。補助金で店頭価格は抑えられても、原油相場そのものの不安定さは残る。イラン情勢の動向次第では、再び上昇が始まるリスクも現時点では消えていない。
(本稿は各種公開情報をもとに作成しました。一部数値は記事掲載時点の情報です)

