日本の個人が持つ金融資産の総額が、2025年12月末時点で2350兆円を超え、過去最高を更新した。日銀の公表値では2350兆8965億円で、前の年の同じ時期と比べて5.3%増となった。この数字は一見「日本人がどんどん豊かになっている」ように映る。しかし実態は少し複雑だ。増加の中身を見ていくと、「何が変わり、何はまだ変わっていないか」が見えてくる。
どんな資産が増えたのか
日本銀行が3か月ごとに公表する「資金循環統計」(しきんじゅんかんとうけい)に今回の数字が含まれている。これは、家計・企業・政府・金融機関などが、どんな金融資産をどれだけ持ち、どれだけ借金を抱えているかを記録した統計だ。
2350兆円という金額の内訳のうち、目立って増えたのが株式と投資信託だ。
- 株式等:前の年と比べて22.6%増、約341兆円
- 投資信託:同じく21.3%増、約165兆円
どちらも2割超の伸びで、かなり大きな変化だ。一方、現金・預金は約1139兆円でやはり最大の項目だが、伸び率はわずか0.5%にとどまった。
なぜ株式・投信の残高がこれだけ増えたのか
二つの要因が重なっている。
一つは、株価の上昇だ。家計が保有する株式や投資信託は、同じ量を持っていたとしても相場が上がれば評価額が増える。今回の残高増の多くは、新たに資金を投じたというより、保有資産が値上がりした結果とみるのが自然だ。「みんなが急に豊かになった」というよりも、「持っていた資産の値段が上がった」という側面が大きい。
もう一つは、新NISAの拡充だ。NISAとは、一定額までの株式や投資信託の運用益が非課税になる制度のこと。2024年から恒久化・拡充され、口座数も利用額も増えている。税制面での後押しが、預金に眠っていた資金を投資商品へ動かすことを後押ししたとみられる。
「現金・預金比率」は48.5%まで低下
一つ注目すべき数字がある。金融資産全体に占める現金・預金の割合が、48.5%となった点だ。
かつて日本の家計は「貯蓄大国」とも呼ばれ、資産の半分以上を現金や預金で持つことが長く続いてきた。しかし2024年9月末に初めて5割を下回り、今回さらに低下した。少しずつではあるが、「とにかく預金」から「投資も活用する」という方向へ家計の行動が変わってきていることを示している。
ただし、約半分がいまだ現金・預金であることも事実だ。欧米では株式・投信などのリスク資産が家計資産の多くを占める国も多く、日本がそこまで変わったとは言いにくい。変化は進んでいるが、まだ途上というのが実態だ。
資産が増えた一方で、借金も過去最高
ここで見落とせないのが、負債の動向だ。
住宅ローンなどを主因に、家計の負債残高も過去最高の405兆円超となった。資産が増えた話と同時に、借り入れも膨らんでいるという事実は、「日本の家計全体が豊かになった」と単純に喜べない側面でもある。とくに住宅ローンを抱える世帯にとっては、資産評価額が上がっても手元の負担は変わらない。
まとめ——「貯蓄から投資へ」は進んでいるが、道半ば
今回の2350兆円という数字は、株高と新NISAの拡充が重なった結果として出てきた。特定の誰かが急に大きな収入を得たというより、制度と相場の変化が家計の資産評価額を押し上げた面が大きい。
「貯蓄から投資へ」という流れは、現金・預金比率の低下というかたちで統計にも表れてきた。ただし変化は漸進的で、相場が大きく下がれば資産残高も縮む。今回の統計は、日本の家計が依然として預金中心でありながらも、徐々に投資へと広がっている過程を映している。
(本稿は各種公開情報をもとに作成しました。一部数値は記事掲載時点の情報です)

