高市総理大臣が3月18日夜、アメリカに向けて日本を出発した。4日間の訪米で、現地時間19日(日本時間20日)にトランプ大統領とホワイトハウスで首脳会談に臨む。茂木外務大臣と赤澤経済産業大臣が同行する。
なぜ今、この会談が重要なのか
今回の日米首脳会談には、普段の外交儀礼を超えた切迫感がある。その背景にあるのが、イラン情勢の緊迫化だ。
イランとアメリカの対立が続くなか、ペルシャ湾とオマーン湾をつなぐ「ホルムズ海峡」をめぐる緊張が高まり、航行の安全に深刻な懸念が生じている。ホルムズ海峡は、世界の原油輸送量の約2割が通過するとされる要衝だ。日本は原油輸入の大半を中東に依存しており、その多くがこの海峡を通る。緊張が長引けば、日本のエネルギー供給に深刻な打撃を与えかねない。
会談の三つの焦点
1. ホルムズ海峡への自衛隊派遣——求める米国、慎重な日本
トランプ大統領はこれまで、日本を含む各国に対し、ホルムズ海峡への艦船の派遣を求める発言を繰り返してきた。その一方で「支援は必要ない」とも発言するなど、立場は一定していない。
トランプ政権1期目で東アジア担当の国務次官補代理を、2期目でNSC(国家安全保障会議)上級部長を務めたデビッド・ファイス氏は17日、NHKのインタビューに対し「要求はいいかげんなものではなく、艦船派遣への期待は真剣なものだ」と述べた。
これに対し高市首相はこれまで国会で「アメリカの攻撃への法的評価を首脳会談で議論するつもりはない」と述べたうえで、艦船の派遣については「法律の範囲内で何ができるか検討している」と説明するにとどめている。国内では野党からも「派遣すべきでない」「国際法違反の戦争への加担になる」といった強い反対意見が出ており、日本政府としては難しい判断を迫られている状況だ。
首相は「したたかな外交、国益第一の外交を展開する」と述べており、明確な返答を避けながら交渉の余地を探る姿勢を示している。
2. アラスカの原油——「脱・中東依存」への一手
会談では、原油の調達先を多角化する具体策も議題に上る。政府は、アラスカ州の原油増産に向けて協力し、その原油を日本が調達する意向をトランプ大統領に伝える方針だという。
この動きは、昨年の日米合意に基づく大型投資計画の一環だ。両政府は5500億ドル(約80兆円)規模の投資を進めており、その中にアラスカから日本への原油輸出に必要な積み出し施設などのインフラ整備が含まれる。2月には第1弾としてガス火力発電所や人工ダイヤモンドの製造設備など3プロジェクトが選定済みで、現在は第2弾の選定が進んでいる。次世代型原子炉の建設なども検討されており、日本企業が設備輸出で関わる可能性もある。
ただし、アラスカ産原油の活用は直ちに中東依存を置き換えるものではなく、中長期的な調達多角化策としての性格が強い。ホルムズ海峡の問題が長期化する可能性を見据えれば、その確保は単なる経済協力を超えた安全保障上の意味も持つ。
3. 日米同盟と対中国戦略
ファイス氏は「長期的に最も重要なのは中国をめぐる課題で、これらの面で日本ほど重要な同盟国はない」とも述べた。トランプ大統領には今回の首脳会談後に中国訪問が予定されているとされ、日本との会談の内容が米中関係にも影響を与えうるとみられている。
高市首相としては、安全保障面での日米同盟の結束確認に加え、重要鉱物のサプライチェーン強化を含む経済安全保障でも連携を深めたい考えだ。
「したたかな外交」の真価が問われる
会談の前後では、日本がどこまで具体的な協力姿勢を示すのかが大きな注目点となる。ただ、現時点でどちらの方向で決着するかは不明で、首相自身も情勢を見極めながら判断するとしている。
原油問題、安全保障、経済協力、そして対中国戦略。複数の難題が絡み合うなかで行われるこの会談は、高市外交の実力を試す最初の大舞台となる。
(本稿は各種公開情報をもとに作成しました。一部数値は記事掲載時点の情報です)

