多様なリスクにピンポイントで備える「ミニ保険」とは?

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身近なトラブルが家計に響く時代

画面がひび割れたスマートフォン。修理に出してみれば、見積もりは3万円超——こうした出費に直面するケースは珍しくない。スマートフォンの端末価格は年々上昇しており、万が一のトラブルが家計に与えるダメージも、以前より大きくなっている。

また、楽しみにしていたコンサートの直前に高熱が出て、やむを得ずチケットを手放す——といった事態も起こりうる。数万円のチケット代が戻ってこないとわかったとき、想像以上に負担感が大きいと感じる人もいるだろう。

こうした「ありがちだけれど、いざ起きると痛い」リスクに、ピンポイントで備えようとする保険が広がっている。通称「ミニ保険」と呼ばれる少額短期保険だ。


「ミニ保険」とは何か

ミニ保険の正式名称は少額短期保険(しょうがくたんきほけん)という。その名の通り、「保険金額が少額」で「保険期間が短い」保険のことを指す。

制度上、保険期間は損害保険系で最長2年、生命保険・医療保険系で最長1年とされている。保険金額にも上限があり、たとえば死亡保険は最大300万円、医療系は最大80万円など、区分ごとに上限が定められている(合計でも1,000万円以下)。※1

「それだと頼りない気がする」と感じるかもしれない。ただ、ミニ保険が狙うのは、そもそも大きな金額を要しないリスクだ。スマホの修理代、旅行のキャンセル料、あるいは葬儀の費用——こうした「数万円〜数百万円の範囲」で収まるリスクへの備えが、ミニ保険の本領発揮の場といえる。

逆に言えば、住宅の火災や長期の入院など、大きな補償が必要なリスクには不向きだ。「小さなリスクに、小さな保険で備える」という割り切りが、ミニ保険の使い方の基本になる。

また、一般の大手保険会社(生命保険会社・損害保険会社)とは異なり、少額短期保険を扱う事業者は「少額短期保険業者」として国への登録が必要な、別枠の業態だ。保険を選ぶ際は、販売元が登録業者かどうかを確認しておくと安心だ。


市場は静かに、でも確実に拡大している

ミニ保険の市場規模は、右肩上がりで成長を続けている。日本少額短期保険協会によれば、2021年度末に約1,054万件だった保有契約件数は、2025年中間期には約1,284万件に達した。収入保険料も同期間で613億円から803億円へと増加している。

なぜ伸びているのか。ひとつは、生活のデジタル化や消費行動の変化を背景に、以前は存在しなかった「新しいリスク」が生まれていることだ。高額になったスマートフォン、コロナ禍を経て復活したイベント・旅行文化、そして高齢化社会が生み出す終活ニーズ——こうした変化が、ミニ保険の新しい需要を生み出している。

もうひとつは、保険料の手頃さだ。補償範囲を絞った分だけコストは低く抑えられており、「必要なときに必要なだけ」という現代的な感覚とも合いやすい。


注目のミニ保険、3つの例

スマホ保険

端末の画面ひび割れ、水漏れ、故障、盗難などを補償する。スマートフォンの修理費用は機種によっては5万円を超えることもあり、キャリアや端末メーカーの補償サービスと並んで、選択肢として認知が広がっている。加入前には「どんな原因が補償の対象か」「自己負担額はいくらか」をよく確認しておきたい。

旅行・イベントキャンセル保険

急病やケガ、自然災害などを理由に旅行やイベントへの参加が困難になった場合のキャンセル費用を補償する。旅行だけでなく、コンサートや観戦チケットに対応した商品もある。ただし「どんな理由でもキャンセルすればOK」というわけではなく、補償対象となる理由の範囲は商品によって異なるため、約款の確認が欠かせない。

葬儀保険(死亡保険)

通夜・告別式の費用や遺品整理などに充てることを想定した死亡保険だ。高齢でも加入しやすい商品設計のものが多く、「家族に金銭的な負担をかけたくない」という思いを持つシニア層の終活ニーズを背景に支持されている。保険金額は最大300万円(法令上の上限)となる。※1


加入前に知っておきたい3つの注意点

便利な反面、ミニ保険には通常の保険と異なる点もある。加入を検討する際は、以下の3点を事前に把握しておこう。

①保険料控除の対象外

一般の生命保険や医療保険、地震保険などは、支払った保険料の一部が「生命保険料控除」として所得控除の対象となり、年末調整や確定申告で税負担が軽くなる。しかしミニ保険(少額短期保険)は、この控除の対象外とされている。※2

「保険に入れば税金が安くなる」という感覚でミニ保険を選ぶと、期待通りの節税効果は得られない。純粋に「備え」としての価値で判断することが大切だ。

②破綻時のセーフティネットが異なる

一般の生命保険会社や損害保険会社が万が一経営破綻した場合、「保険契約者保護機構」という仕組みによって契約者は一定程度保護される。ところが、ミニ保険(少額短期保険業者)はこの保護機構の対象外だ。※3

ただし、まったくの無保護というわけではない。少額短期保険業者には、法務局への「供託(きょうたく)」と呼ばれる保証金の積み立てが義務付けられており、一定の契約者保護の枠組みは存在する。※4 とはいえ、保護の仕組みが通常の保険とは異なることは、加入前に理解しておきたい事実だ。

③掛け捨て一択

ミニ保険は、制度上「掛け捨て型」に限定されている。つまり、解約しても満期を迎えても、支払った保険料は戻ってこない。「保険料が貯まって将来戻ってくる」タイプ(貯蓄性保険・満期金型など)は、少額短期保険という枠組みでは取り扱えない。※1

これは制度の仕様であり、商品選びの問題ではない。「掛け捨てだから損」と考えるより、「その期間のリスクに備えるための費用」と割り切って使うのが、ミニ保険との上手な付き合い方だろう。


ミニ保険を選ぶ前のチェックリスト

最後に、加入を検討する際に確認しておきたいポイントをまとめておく。

  • そのリスクはミニ保険の「上限の範囲内」に収まるか(期間・金額の制約に当てはまるリスクか)
  • 補償の対象となる原因・条件を確認したか(免責事項、自己負担額、支払条件など)
  • すでに同様の補償を持っていないか(クレジットカードの付帯保険、キャリアの補償サービス、旅行会社の補償、火災保険の特約など)
  • 販売元が少額短期保険業の登録業者か確認したか
  • 税制優遇を期待していないか(生命保険料控除は適用外)

保険は、「入ることが目的」ではなく「リスクに備えることが目的」だ。ミニ保険の場合も同様で、自分の生活の中にどんなリスクがあり、それがミニ保険という枠組みで備えられるものかどうかを見極めることが、賢い選択への第一歩になる。


出典:日本少額短期保険協会「2025年度 少額短期保険業界の中間決算概況について」(2025年12月15日公表)

(根拠注記)
※1 財務省 近畿財務局「少額短期保険業について」
※2 生命保険文化センター「税金の負担が軽くなる『生命保険料控除』」(少額短期保険は控除対象外の記載)
※3 金融庁「保険契約者保護機構制度(保険会社のセーフティネット)」(少額短期保険業者は対象外の注記)
※4 e-Gov法令「少額短期保険業者供託金規則」

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この記事を書いた人

CFP®/1級ファイナンシャルプランニング技能士
公益社団法人 日本証券アナリスト協会認定
・プライマリー・プライベートバンカー
・資産形成コンサルタント
一般社団法人金融財政事情研究会認定
・NISA取引アドバイザー

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