投資において「複利の力」は最も強力な武器のひとつです。
ただしその源泉は資産ごとに異なります。株式の複利は利益の再投資により生まれますが、金や仮想通貨は少し違う仕組みで複利的な上昇が現れます。
株式の複利 ― 利益再投資が生み出す成長
株式投資の魅力は、企業が得た利益を再投資し、それが次の利益を生む「内的な複利」にあります。
企業は利益を設備投資や研究開発、新規事業に回します。その再投資が新たな利益を生み、再び投資される。この循環が続けば、株価は時間とともに指数関数的に伸びていきます。
皆さんが複利をイメージする際、多くの場合「株式」が頭に浮かぶのは自然なことです。なぜなら、企業が成長を積み重ねる姿は複利の仕組みを最も直感的に理解できる例だからです。
金の複利 ― インフレが生む名目価格の成長
一方、金そのものは利益を生みません。
しかし インフレが続く環境 では、名目価格は複利的に上昇します。
仮に毎年10%のインフレが起き、金がそれに連動して値上がりするとします。
100万円分の金を購入した場合:
- 1年後:110万円
- 2年後:121万円
- 3年後:約133万円
- 5年後:約161万円
- 10年後:約259万円
金そのものはキャッシュフローを生まなくても、通貨価値が10%ずつ減少する環境では名目価格が 複利曲線 を描いて上昇していきます。これは「外的な複利効果」と言えるでしょう。
仮想通貨の複利 ― 希少性とインフレの掛け算
仮想通貨、特にビットコインも同じ理屈が働きます。
供給量が2100万枚で固定されており、世界経済の拡大に伴って法定通貨が増えれば、その相対的希少性が価値を押し上げます。
100万円分のビットコインを保有し、毎年10%ずつ価値が上昇したと仮定すると:
- 1年後:110万円
- 5年後:約161万円
- 10年後:約259万円
さらに暗号資産には、レンディングやステーキングで利息を得て再投資できる仕組みもあり、ここでは投資家の行動によって「追加的な複利」が生まれることもあります。
整理すると
- 株式:企業の利益再投資による 内的な複利
- 金:インフレによる通貨価値の減少を通じた 外的な複利
- 仮想通貨:インフレ+限定供給による 外的な複利、さらに投資家行動次第で「再投資的な複利」も加わる
まとめ
複利は「時間をかけて指数関数的に資産が増える」現象ですが、その源泉は資産クラスによって異なります。
- 株式は企業活動という内部の仕組みから複利を生む
- 金や仮想通貨はインフレや需給構造によって複利的な価格上昇が起きる
つまり投資家が理解すべきなのは、「複利がどこから来るのか」 です。
その理解があれば、株と金と仮想通貨をどう組み合わせるか、戦略的に判断できるようになるでしょう。