NVIDIA vs インテル ― 政府支援の意味

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導入

近年の株式市場では、生成AIブームの波に乗る NVIDIA が圧倒的な存在感を示しています。
一方、かつて半導体の象徴だった インテル は競争力低下に苦しみ、株価でも差が広がっています。
それにもかかわらず、米政府はインテルへの出資を協議し、強い支援姿勢を見せています。

「なぜNVIDIAではなくインテルなのか?」――多くの人が抱くこの疑問に答えるには、両社の立ち位置の違いを理解する必要があります。


NVIDIA:設計に特化するファブレス企業

  • NVIDIAの強みは設計能力です。特にGPU設計では世界トップクラスで、生成AIの需要拡大を追い風に業績を急拡大させました。
  • しかし製造はすべて TSMCなど外部ファウンドリに依存
  • 市場では成功していても、国家戦略の視点で見ると 供給リスクを抱えています。
  • 台湾や韓国の情勢が不安定化すれば、NVIDIAもまた供給網を断たれてしまう可能性があるのです。

インテル:設計と製造を両立する垂直統合型

  • インテルの特徴は、設計だけでなく 自社での製造能力(ファブ)を持つ点です。
  • 米国内に拠点を持ち、オハイオ州などで大規模工場計画を進めています。
  • 近年は製造技術でTSMCに遅れを取り、設計でもNVIDIAやAMDに押されているものの、国内製造を維持する最後の砦としての役割があります。
  • 米政府にとって、インテルの工場を支えることは 半導体の供給網を米国に残すことそのものを意味します。

AMDとの位置づけ

  • AMDも設計企業ですが、2000年代に自社工場を切り離し、現在は完全にTSMC依存です。
  • よって政府支援の対象としては「NVIDIAと同じくファブレス」という位置づけになり、国内製造基盤確保の観点からはインテルほどの重みはないといえます。

政府支援の意味

  • 米国の政策の根底には、安全保障と供給網のリスク分散があります。
  • 「市場の勝者」であるNVIDIAではなく、「国家戦略の砦」であるインテルに出資するのはそのためです。
  • すでにCHIPS法で多額の補助金を投入している以上、インテルを支えることは “米国内半導体製造を死守する” 政策の象徴でもあります。

投資家にとっての視点

  • 短期的には「政府がインテルを支援する」というニュースが株価材料になります。
  • 中長期では、資金投入だけでインテルが技術遅れを取り戻せるのかが焦点。
  • 政府支援がインテル復活の起爆剤になるのか、それとも延命策にとどまるのか、市場は見極めを迫られます。

まとめ

「なぜインテルなのか?」という疑問は、多くの投資家や市場関係者が共有するものです。
その答えは、NVIDIAとインテルの役割の違いにあります。

  • NVIDIAは設計で世界をリードするが、製造は海外依存。
  • インテルは競争力では劣っても、米国に残る製造拠点という国家戦略上の価値を持つ。

米政府のインテル支援は、市場の勝者を選ぶのではなく、国家の供給網を守る選択だといえるでしょう。


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この記事を書いた人

CFP®/1級ファイナンシャルプランニング技能士
公益社団法人 日本証券アナリスト協会認定
・プライマリー・プライベートバンカー
・資産形成コンサルタント
一般社団法人金融財政事情研究会認定
・NISA取引アドバイザー

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