2025年8月前半は、米国経済を巡る指標と政治的動きが重なり、金融市場は大きく揺れた。特に、月初の雇用統計では予想を下回る結果と過去分の大幅下方修正が示され、さらに労働統計局(BLS)長官の解任という異例の事態が発生。インフレ指標やその他の経済データも混在したシグナルを示し、市場の利下げ観測は日々変化した。
目次
1. 月初の雇用統計とBLS長官解任
発表日:8月1日(米東部時間)
- 非農業部門雇用者数(7月):予想+10.6万人に対し、結果は+7.3万人と大きく下振れ。
- 過去分修正:5月・6月分が合計▲25.8万人下方修正され、労働市場の減速感が鮮明に。
- 失業率:4.2%(予想通り)、平均時給は前年比+3.9%と賃金上昇は依然として高め。
この発表直後、トランプ大統領がBLS長官エリカ・マッケンターファー氏を解任。雇用統計を「不正」と批判したが具体的な根拠は示さず、統計機関の独立性への懸念が広がった。後任には保守系シンクタンク出身でBLS批判を行ってきたE.J. Antoni氏を指名。市場や専門家からは、統計の信頼性低下を懸念する声が相次いだ。
市場反応(8/1)
- 米株:発表直後は利下げ観測で上昇するも、景気減速懸念で引けは伸び悩み
- 米金利:2年債利回りが大幅低下
- 為替:ドル売り優勢(ドル円は円高方向)
2. インフレ指標の混在したシグナル
8月12日:CPI(7月)
- 総合CPI:前年比+2.7%(予想+2.8%)、前月比+0.2%
- コアCPI:前年比+3.1%、前月比+0.3%
- ガソリン価格の下落でヘッドラインは落ち着く一方、コアは依然高め。
- 市場は「インフレ沈静化」と受け止め、9月利下げ観測が強まり株高・ドル安。
8月14日:PPI(7月)
- 総合PPI:前月比+0.9%(予想+0.2%)、前年比+3.3%
- コアPPIも強めで、3年ぶりの大幅上昇。関税の影響や卸売段階でのコスト上昇が背景。
- 市場は一転してインフレ再燃を警戒、株安・金利上昇・ドル高へ。
3. その他の主要指標と景気感
- ISM製造業(7月):48.0(前月49.0)と縮小基調継続
- ISM非製造業(サービス、7月):50.1(前月51.5)と拡大・縮小の境目付近まで低下
- 貿易収支(6月):▲602億ドル(前月▲717億ドルに改定)と赤字縮小
- 非農業生産性(2Q速報):+2.4%(予想+1.9%)、1Qは▲1.8%へ改定
- 30年モーゲージ金利:6.58%と昨年10月以来の低水準
4. 前半戦の総括と今後の焦点
- 景気面:雇用の伸び鈍化とISM低下で減速感が強まる一方、GDP成長や生産性上振れが下支え要因。
- インフレ面:CPIは落ち着きも、PPIが再加速を示し不透明感が増す。
- 政治・制度面:BLS長官解任は統計の独立性や信頼性への懸念を呼び、今後のデータ受け止め方に影響の可能性。
- 市場のスタンス:9月利下げ観測は維持しつつも、その幅(25bp or 50bp)は今後のデータ次第。
今後注目のイベント
- 8月後半:ジャクソンホール会議(パウエル議長発言)
- 9月上旬:8月雇用統計、CPI・PPI再発表
- FRBの利下げ幅決定の材料となる最新データ
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【外部関連リンク】
- 日本銀行(BOJ)公式サイト ─ 国内金利や政策決定の確認に。
- 米連邦準備制度理事会(FRB)公式サイト ─ FOMCや声明内容はこちら。
- Bloomberg(ブルームバーグ日本版) ─ 世界の金融・経済ニュースを網羅。
- Reuters(ロイター日本語版) ─ 最新のマーケット速報と経済記事。
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