1. 調査の概要
毎月勤労統計調査は、日本の雇用・賃金・労働時間の動向を知るための基礎的なデータとして毎月実施されています。今回の速報は、令和7年4月分の結果です。企業や働き方の変化を把握するうえで、毎月のデータは社会全体の“今”を映し出します。
- 全国32,766事業所を対象とし、回収率は66.9%(21,935事業所)。
- 賃金・労働時間・雇用の動向を調査。
2. 名目賃金(現金給与総額)の動向
物価変動の影響を考慮せず、支給された現金給与額そのものの動きを「名目賃金」と呼びます。家計が実際に受け取る金額の増減がどのように推移しているかを示す指標であり、働く人の“懐事情”の変化を直接反映します。
- 就業形態計(規模5人以上)
- 現金給与総額は 302,453円(前年同月比2.3%増)
- きまって支給する給与は 289,551円(2.2%増)
- 所定内給与は 269,325円(2.2%増)
- 特別に支払われた給与(賞与など)は 12,902円(4.1%増)
- 一般労働者:現金給与総額 388,583円(2.6%増)
- パートタイム労働者:現金給与総額 111,291円(2.2%増)、時間当たり給与1,362円(3.6%増)
3. 実質賃金の動向
実質賃金は、物価の変動を差し引いた「お金の価値」の動きを示します。名目の給料が増えても、物価がそれ以上に上がれば、実際の暮らしは厳しくなります。家計の“実感”に近い指標です。
- 物価上昇を反映した「実質賃金指数」は
- 消費者物価指数(持家の帰属家賃除く)基準で 83.7(前年同月比1.8%減)
- 消費者物価指数(総合)基準で 85.2(1.3%減)
- 賃金は増加しているものの、物価の上昇(4.1%)の影響で、実質的な購買力は前年より減少。
4. 業種別・規模別の特徴
業種や事業所の規模によって、賃金や伸び率には大きな差が出ます。どの分野で賃金が上がりやすいか、あるいは横ばい・低迷かがこの項目で分かります。雇用の多様化が進むなか、業界間の格差も浮き彫りです。
- 賃金の伸びが最も高いのは「鉱業、採石業等」「金融業・保険業」「学術研究等」など。
- 「飲食サービス業等」や「教育、学習支援業」では伸びが鈍い傾向。
- 事業所規模が大きい(30人以上)ほど給与水準・伸び率が高い。
5. 労働時間の動向
賃金とともに重要なのが「労働時間」です。働く時間の長短は、働き方改革や景気の波を反映します。近年は労働時間の減少傾向が続いており、働き方や企業側の調整も影響しています。
- 就業形態計の総実労働時間は 139.7時間(前年同月比1.2%減)
- 所定内労働時間も 129.5時間(1.2%減) と減少傾向
- 所定外労働時間(残業等)も 10.2時間(2.8%減)
- 業種別では「鉱業、採石業等」「製造業」などは労働時間が多いが、全体では減少傾向。
6. 雇用・パートタイム労働者の状況
働き方の多様化に伴い、パートタイム労働者や非正規雇用の比率も高まっています。雇用の総数やパート比率の推移は、労働市場の“実態”や働き方の選択肢の広がりを示します。
- 常用雇用者数(規模5人以上)は 51,511千人(1.7%増)
- パートタイム労働者比率は 30.84%(前年同月比0.36ポイント増)
- 特に「飲食サービス業等」「生活関連サービス等」「卸売・小売業」でパート比率が高い。
7. まとめ
今回の調査は、賃金が名目上は増えていても、物価の上昇によって実質的な生活水準が低下していることを改めて浮き彫りにしました。労働時間の減少、パート比率の上昇など、働く現場の“変化”も引き続き続いています。働き方や家計の置かれた現状を知るうえで、今後も注視が必要です。
- 名目賃金は増加基調だが、物価上昇に追いついておらず、実質賃金は減少。
- 労働時間は減少傾向が続き、働き方改革や景気動向の影響も。
- パートタイム比率は高止まりし、特定業種での非正規化が目立つ。
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【外部関連リンク】
- 日本銀行(BOJ)公式サイト ─ 国内金利や政策決定の確認に。
- 米連邦準備制度理事会(FRB)公式サイト ─ FOMCや声明内容はこちら。
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