MOVE指数は、米国債市場における金利の”変動リスク”を数値化した代表的な指標です。投資初心者の方にもイメージしやすいよう、計算の仕組みや活用方法をやさしく解説します。
概要 #
MOVE指数は、Merrill Lynch(現バンク・オブ・アメリカ証券)が算出し、Bloomberg上では”MOVE”というティッカーで表示される債券市場の”ボラティリティ(変動率)”指標です。株式市場のVIX(恐怖指数)が株価の予想変動を示すのに対し、MOVEは米国債の金利が将来どれほど上下するかを示します。
算出方法 #
債券オプションとは、あらかじめ決めた金利で債券を買ったり売ったりできる”権利”です。MOVE指数は、2年物、5年物、10年物、30年物など複数の期間の国債オプションの買い手と売り手の取引価格から、市場参加者が想定する金利の”上下幅”を計算し、年率換算したものです。異なる期間を均等に加重して平均を取り、1つの指数としてまとめています。
活用方法 #
投資家や債券トレーダーは、MOVE指数を使って以下のような判断を行います。
- リスク管理:金利が急変動するリスクが高いときは、保有債券の割合を調整したり、デュレーション(価格変動に対する感応度)を下げる対策を検討します。
- マクロ分析:FRB(米連邦準備制度理事会)の政策発表や雇用統計などの重要指標発表前後でMOVEの動きをチェックし、市場がどこまで”警戒”しているかを測ります。
- 相対比較:株式市場のVIXと並べて見ることで、株価と金利の”恐怖感”の乖離状況を把握し、アセット配分のヒントにします。
読み方のポイント #
MOVE指数の数値は次のように解釈できます。
- 20〜30程度:金利市場は比較的落ち着いており、急激な金利変動は想定されていない
- 50〜70程度:中程度の警戒レベル。市場参加者が金利動向に注目している
- 80以上:大きな金利変動リスクを示唆。経済指標や政策発表に敏感に反応している可能性が高い
おわりに #
債券投資では目立ちにくい”金利変動リスク”を可視化できるMOVE指数は、ポートフォリオの安全性を高めるうえで重要なツールです。まず日々の動きを追いかけ、市場の”緊張感”を感じ取ることから始めてみましょう。