「ゴルディロックス関税」って何?──おとぎ話から見る“ちょうどいい”政策のむずかしさ

はじめに:おとぎ話が経済ニュースに登場?

最近、一部の経済メディアやアナリストのコメントで「ゴルディロックス(Goldilocks)」という言葉が使われているのを見かけることがあります。
たとえば「ゴルディロックス経済」「ゴルディロックス関税」などの表現です。

これは、あの有名なおとぎ話『ゴルディロックスと3匹のくま』に由来する言葉で、「ちょうどよさ」「中間のバランス」を象徴的に表しています。

では、なぜ今この言葉が、トランプ政権の関税政策と一緒に語られているのでしょうか?


ゴルディロックスとはどんな話?

まず簡単におさらいしましょう。

『ゴルディロックスと3匹のくま』は、森のくまたちの家に迷い込んだ金髪の少女ゴルディロックスが、
・「熱すぎる」「冷たすぎる」「ちょうどいい」おかゆ
・「大きすぎる」「小さすぎる」「ちょうどいい」椅子やベッド
を試していくというストーリーです。

この「ちょうどよさ(=中庸)」のイメージが、経済の世界でも好まれる概念となり、「ゴルディロックス経済」という表現が生まれました。


ゴルディロックス経済・ゴルディロックス関税とは?

「ゴルディロックス経済」とは、インフレも失業も低めで、景気が“熱すぎず冷たすぎず”ほどよく安定している状態を指します。投資家にとっては理想的な環境です。

この考え方が派生し、「ゴルディロックス関税」という表現も出てきました。

たとえば、アメリカのVoxは、トランプ政権が打ち出す関税が「高すぎると経済に打撃」「低すぎると効果がない」といったジレンマにあることを取り上げ、「ちょうどよい関税(Goldilocks Tariff)」を探しているようだと表現しました。


でも、「ちょうどよさ」は簡単じゃない

物語の中でゴルディロックスは「ちょうどよい椅子」を見つけたと思ったのに、それが壊れてしまいます。

このエピソードは、「自分にとって快適でも、それが他人や全体にとって良いとは限らない」という教訓として読まれています。

実際の関税政策も同じで、「ちょうどよく見える水準」が、別の誰かの経済活動を圧迫したり、予想外の副作用を生んだりすることがあります。
特にトランプ政権のように政策判断が急変しやすい場合、その“バランス感覚”はますます難しいものになります。


おわりに:なぜ今この比喩が使われているのか

「ゴルディロックス」という言葉が今使われているのは、世界の経済や外交政策が「極端すぎず、穏やかすぎず」という微妙なバランスを求めている時代背景があるからです。

とはいえ、ちょうどよい関税、ちょうどよい金利、ちょうどよいインフレ率──そんな理想の“中間”を見つけるのは、森の中で壊れない椅子を探すのと同じくらい、難しいことなのかもしれません。


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この記事を書いた人

CFP®/1級ファイナンシャルプランニング技能士
公益社団法人 日本証券アナリスト協会認定
・プライマリー・プライベートバンカー
・資産形成コンサルタント
一般社団法人金融財政事情研究会認定
・NISA取引アドバイザー

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