SBI新生銀行が公的資金2,300億円を完済──平成金融危機の終章へ

2025年7月、SBI新生銀行(旧・日本長期信用銀行)は、国から受けた公的資金の残額2,300億円を全額返済したと発表しました。これは1990年代後半に起きた「平成の金融危機」の総決算ともいえるニュースです。

かつての金融危機とはどのようなもので、なぜ国が多額の資金を銀行に投入したのか。そして、今回の完済が持つ意味とは何なのか。わかりやすく振り返ります。


平成の金融危機とは何だったのか?

1990年代初頭、日本経済はバブル崩壊に直面しました。地価や株価が急落し、それまで担保として貸し出していた融資が「不良債権」と化します。特に企業向け長期貸出に特化していた日本長期信用銀行(長銀)などは、多額の不良債権を抱えて経営危機に陥りました。

当時は「貸し渋り」や「貸しはがし」が社会問題となり、経済の停滞を招く恐れがあったため、政府は銀行の救済に乗り出します。


長銀の破綻と国有化、そして新生銀行へ

1998年10月、日本長期信用銀行は経営破綻し、預金保険機構を通じて国有化されました。これは戦後初の銀行の破綻であり、金融行政の大転換点でもあります。

翌1999年、米投資ファンドのリップルウッド・ホールディングスが買収し、2000年に「新生銀行」として再出発しました。公的資金として注入された金額は、約3兆6,000億円にも上ります。


完済まで25年──公的資金返済の道のり

新生銀行は再上場後、順調に利益を上げるものの、その利益の多くは米投資ファンドに流れたため、「税金が十分に回収されなかった」と批判を受けてきました。

その後、国内資本への移行を経て、2021年にはSBIグループの傘下に入り、「SBI新生銀行」となりました。そして2025年7月、残っていた2,300億円の公的資金をついに完済。長銀破綻から27年、再建の物語は完結を迎えました。


他の銀行の公的資金返済状況は?

平成の金融危機では、長銀以外にも多くの金融機関が公的資金の注入を受けました。

銀行名注入時期注入額現在の状況
日本長期信用銀行1998年約3.6兆円2025年に完済(SBI新生銀行)
日本債券信用銀行1998年約2.1兆円あおぞら銀行として再建済み
りそな銀行2003年約3兆円2015年までに完済
三井住友・みずほなど1999〜2003年数兆円規模2006年ごろまでに返済完了

SBI新生銀行の完済により、平成金融危機の際に注入された主要な公的資金は、事実上すべて回収された形になります。


完済の意味──「平成の清算」と日本の金融行政の転機

今回の完済は、単なる金銭的な返済にとどまりません。日本の金融行政がかつての危機を乗り越え、長期にわたる再建を完遂した象徴的な出来事です。

同時に、税金による救済の是非、外資への再建委託のあり方、再上場による利益の分配といった問題提起も残しました。平成という時代の苦い記憶がようやく一区切りを迎えた今、次の金融危機にどう備えるかが問われています。


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この記事を書いた人

CFP®/1級ファイナンシャルプランニング技能士
公益社団法人 日本証券アナリスト協会認定
・プライマリー・プライベートバンカー
・資産形成コンサルタント
一般社団法人金融財政事情研究会認定
・NISA取引アドバイザー

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