【概要・背景】
7月18日から19日にかけて南アフリカ・ダーバンで開催されたG20財務相・中央銀行総裁会議が閉幕しました。共同声明では、米国による高関税措置の発動を目前に控え、各国が強い危機感を共有。ルールに基づく貿易体制の重要性が改めて強調される結果となりました。
米国関税発動の現状と影響
米国は2025年8月1日を期限として、日本を含む14カ国に対して新たな相互関税を示しています。対象品目には最大で50%に及ぶ関税が課される可能性があり、特にEUに対しては最大30%が通告されています。
ドイツ連銀のナゲル総裁は「米国の関税措置が実行されれば、ドイツは2025年に景気後退に陥る可能性がある」と警告。また、ドイツ財務相のリントナー氏は「関税戦争を回避するための国際協調が急務」と述べ、強い懸念を示しました。
G20共同声明に漂う危機感
共同声明では、米国の関税を直接名指しすることは避けられ、「貿易緊張(trade tensions)」という表現が用いられました。関税(tariff)という語の明記を避けた背景には、米国との対立を表面化させたくないG20内の配慮があると見られます。
その一方で、声明文には「WTOを含むルールベースの多国間貿易体制の強化」や「公平で非差別的な貿易環境の促進」が盛り込まれ、各国が自由貿易への回帰を望んでいる姿勢が明示されました。
米代表の不在と影響力の残響
今回のG20には、米財務長官スコット・ベッセント氏は不参加となり、2月のケープタウン会合に続き連続欠席となりました。米代表の不在が続いているものの、米国の主張は依然として各国の議論に強い影響を及ぼしていると見られます。
特に関税を巡る協議では、声明文の表現に対して米国が慎重姿勢を貫き、最終文言に関与した形跡がうかがえます。
今後の展望とリスク
8月1日に関税が実際に発動された場合、EUや中国、インド、ブラジルなどが報復関税を導入する可能性が高く、世界的な貿易摩擦が再燃するリスクがあります。
今回のG20では、他にも中央銀行の独立性や気候変動対応、債務再編などが議題となりましたが、特に環境分野では米国の消極的な姿勢が際立ち、強い言及は盛り込まれませんでした。
以上のように、G20は世界経済の分断リスクが強まる中で開催され、米国の保護主義的な姿勢に各国が警戒を強める構図となっています。今後の関税発動の行方が、グローバル市場にとって大きな転機となることは間違いありません。
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【外部関連リンク】
- 日本銀行(BOJ)公式サイト ─ 国内金利や政策決定の確認に。
- 米連邦準備制度理事会(FRB)公式サイト ─ FOMCや声明内容はこちら。
- Bloomberg(ブルームバーグ日本版) ─ 世界の金融・経済ニュースを網羅。
- Reuters(ロイター日本語版) ─ 最新のマーケット速報と経済記事。
- TradingView ─ 株価・為替・指数チャートの可視化に便利。