日本は地震や豪雨、台風、火山噴火など多様な自然災害に見舞われる「災害大国」です。そんな日本の防災体制を抜本的に強化するため、石破内閣は2024年末から2025年にかけて「防災庁」の設置を目玉政策の一つとして掲げました。政府や与党では早くも防災庁設置に向けた検討が進められ、令和8年度(2026年度)中の設置を目指しています。
以下「防災庁設置準備アドバイザー会議」の報告書をまとめた記事です。
防災庁設置までの流れ
防災庁設置構想は、自民党の「防災体制抜本的強化本部」が立ち上がり、防災庁設置に向けた準備室も発足していました。南海トラフ地震や首都直下地震といった国難級の大規模災害への対応を司る司令塔組織として、専任の大臣を置くことが計画されています。これまでの災害対応の縦割り行政の限界や、気候変動による災害激甚化、人口減少による地域防災力低下など、社会の変化に対応するための抜本的改革として位置づけられています。
防災庁設置の背景と必要性
日本は過去に阪神・淡路大震災や東日本大震災など甚大な被害を受けてきましたが、近年の気候変動による風水害の激甚化や、南海トラフ地震や富士山噴火のような超広域かつ複数都市を同時に襲う国難級の災害が切迫しています。これらの災害では甚大な人的被害や経済損失が予想され、従来の防災体制だけでは対応が困難な局面も増えています。
加えて、少子高齢化や人口減少による地域の防災対応力の低下、老朽化したインフラ、行政の縦割りや人員不足といった構造的課題も深刻化しています。複雑化・多様化する災害に対し、平時からの備えを強化し、発災時から復旧・復興まで一貫した司令塔機能を持つ組織の設置が不可欠です。
防災庁の基本理念と役割
防災庁の究極の目的は「国民の命と暮らしを守り抜く」ことであり、自然災害による被害の最小化と国家・社会機能の維持を使命とします。防災庁は、平時から発災、復旧・復興まで一貫した司令塔として機能し、産官学民のあらゆる力を結集して防災政策の企画・立案・推進を担います。
具体的な役割は以下の三本柱です。
- 防災に関する基本政策・国家戦略の立案
過去の災害教訓や最新技術を踏まえ、多様なリスクを先読みし中長期的な防災戦略を策定します。 - 平時における事前防災の推進・加速
関係府省庁、自治体、民間企業、地域住民の取組を大局的に把握し、抜け・漏れを補完しながら連携強化を図ります。 - 発災時から復旧・復興までの災害対応の司令塔
政府の災害対策本部を運営し、デジタル技術を駆使して被害状況を把握・共有。被災地支援のワンストップ窓口を担い、迅速かつ包括的な対応を推進します。
防災庁が取り組むべき具体的施策
- 災害リスク評価と対策計画の推進
デジタル公共財やAIを用いて地域レベルで複雑な災害リスクをシミュレーション。重要インフラの被害を含めた横断的評価に基づき、戦略的対策計画を作成します。 - 事前準備の徹底
被災者支援体制の構築、避難生活環境の改善、多様な被災者ニーズへの対応、災害時の医療体制強化(船舶医療や遠隔診療等の最新技術導入)を推進します。 - 発災後の初動体制強化
関係機関との迅速な被害情報収集・共有、被災自治体のワンストップ窓口設置、被災者支援の徹底、復旧・復興支援の継続を図ります。 - 産官学民連携の強化
地方自治体、民間企業、NPO、ボランティア、市民が一体となる連携体制の整備、防災教育や専門人材育成を推進します。 - 防災技術の研究開発・国際展開
最新科学技術の社会実装を推進し、防災先進国として世界に知見や技術を発信します。
組織体制と職員の役割
防災庁は内閣直下に設置され、専任大臣を置きます。平時から府省庁に勧告権限を持ち、産官学民の専門家が参画して政策提言や進捗監視を行います。十分な人員体制と予算を確保し、職員が誇りを持ち、持続的に働ける環境づくりも重視されます。
まとめ
防災庁は、これまでの災害教訓と最新技術を活用し、平時から発災時、復旧・復興までを見据えた一貫した防災体制を国全体で推進する中枢組織です。科学的な災害リスク分析を通じて被害を未然に防ぎ、国難級の災害にも万全の備えで立ち向かうことが期待されています。さらに、防災庁を中心に国民一人ひとりが主体的に関わる防災社会の実現を目指します。
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【外部関連リンク】
- 日本銀行(BOJ)公式サイト ─ 国内金利や政策決定の確認に。
- 米連邦準備制度理事会(FRB)公式サイト ─ FOMCや声明内容はこちら。
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